クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団の演奏で、ベルリオーズの幻想交響曲を聴く(1963年、ロンドン、キングウェイ・ホールでの録音)。
これは、クールで精緻な演奏。
幻想交響曲のレコード史は、ミュンシュが発展させ、マゼールが改革し、ドホナーニが一旦完成させたと思っている。革命的な演奏があらわれないかぎり、この思いは変わらないかも。
年代的に、このクレンペラー盤はミュンシュ一連の録音とほぼ同時代になる。けれども、コンセプトはミュンシュとは異なっており、細部を明確に描くところはマゼールに近い。マゼールのCBS録音は1977年。それほど、新しかったということだと考えられる。
1楽章は、神妙。ゆったりとしたテンポで、ベルリオーズの管弦楽法をじわじわグイっと掘り下げる。ヴァイオリンは対抗配置。随所に、効果が出ている。
2楽章はコルネット入り。当時としては新しい試みだったかもしれない。ファンタスティックな演奏。まるで「真夏の夜の夢」のよう。
ただ、欲を言うならば、マゼールのように楽譜通りハープを左右に分けてほしかった。
3楽章もじっくり。ひとつひとつの楽器の音色を堪能させてくれる。特に、クラリネット、コーラングレを始めとした木管楽器が生き生きとしている。主旋律を第二2ヴァイオリンが歌って、第1がキザミにまわっている個所がある。雷鳴のティンパニは粒だっていない。
この楽章に18分かけている。長い部類だろう。
4楽章は厚い。でも、カラッとしている。反復はなし。
5楽章も足取りは重厚。怒りの日のフレージングはどっしりしていて、とてもいい。そして、相変わらず、木管楽器の味が素晴らしい。対して、打楽器はわりとアバウト。塊がザアーっと流れる感じで、粒立ちがイマイチ。そこがもったいない。
パースのビッグムーン。
PR