イタリア弦楽四重奏団の演奏で、ベートーヴェンの「大フーガ」を聴く(1969年4月、スイスでの録音)。
これは、芯は強靭でありながら、しなやかな演奏。
この曲は、19世紀までは愛好家のみならずプロの音楽家からも評判が悪かったらしいが、20世紀になってその真価が認められるようになったという。
確かに、ベートーヴェンの後期の四重奏曲は、これを含めて晦渋である。今でこそCDで何度も繰り返し聴くことができるようになったが、1回のコンサートでこれらの面白さを実感するのは、骨の折れることだったろう。
イタリアSQによる演奏は、生活の一部とは言わないまでも、もう普通に、すんなりとはいってくる。ゆったりとしたテンポが心地よい。
密度の濃い音色は、あたかもウイーンのコーヒー。アンサンブルの緊密さは、上等な絹のネクタイを思わせる。
これで、この団体によるベートーヴェンの後期はすべて聴き終わった。どれもレベルの高い出来だと思うが、この「大フーガ」がひときわ印象的。素晴らしい演奏。
パースのビッグムーン。
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