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クレオバリーのヘンデル「メサイア」

2008.11.24 - ヘンデル

handel

ヘンデル「メサイア」 クレオバリー指揮ブランデンブルク・コンソート


大岡昇平の「来宮心中」を読む。
農機具製造工場を営む男と、バーの女給との不倫。
逃避行を続けるうち、やがて周囲にも知れ渡り、親兄弟から激しく咎められる。
そういうときに度胸が座るのは、女だ。最初のうちは、女の打算と男の打算が交錯するが、男は、やがてだんだんとしぼんでくる。未練がましくなってくる。それに対して女は腹が据わっている。
「乞食をしてもいいから、一緒に暮らしましょうか」と言われて男は怯む。そういう男の表情を女は見逃さない。
ここぞといったときの女の根性のすごさがあらためてわかるのだ。
これはコワイ。



クレオバリーのヘンデルは、おおらかで楽しい演奏。
管弦楽も合唱も、精緻というよりはほどよく甘いものなので、技術的にいえばアマチュアっぽい素直さがある気がする。
アマチュア的精神とかいう言葉があるけれども、それが温かみをあらわすものであるなら、この演奏はそれにふさわしいかもしれない。
ソロはみんな普通にいい。これといった特色はないのだけど、音程もいいし、声も悪くない。ソリストの自己主張がすごく薄いので、これは誰だ、というようなオドロキはない。
だけど、全体の演奏にこれだけ溶け込んでいる歌もないもので、違和感は皆無である。どこを切り取って聴いてみてもしっくりくる。
特筆は、少年合唱。ふんわりと柔らかで透明な声だ。これが登場すると、じわじわと華やかになる。
管弦楽はピリオド奏法だと思うが、アクが少なく、聴きやすい。モダン楽器との差別化を図るような攻撃的なものではなく、いかにも自然に身についたというような風情がある。
会場の熱気やヒトの気配がないために、ライヴ録音であることはちょっとわかりづらかった。「ハレルヤ」と「ラッパが鳴りて」でトランペットがコケていなければ、最後までスタジオだと思っていただろう。
それくらい安定感のある演奏でもある。
バランスのよさ、中庸さが、最初から最後まで一貫して保たれているから、それはひとつの堅固なスタイルと受け取れるのだ。


ステファン・クレオバリー指揮
ブランデンブルク・コンソート
ケンブリッジ・キングス・カレッジ合唱団
リン・ドーソン(S)
ヒラリー・サマーズ(A)
ジョン・マーク・エインズリー(T)
アラステアー・マイルズ(B)

1994年、オランダでの録音。
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Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま お早うございます

大岡昇平さんの本は、最近は読んでいません。
どうも読書が偏ってきているように思います。
読める間に色々と読みたいものですは〜
音楽も同じなわけですが〜。

「メサイア」シリーズが続いていますね
クリスマスまで続くかもしれませんね〜。
吉田さんが推薦されているものから一つか、二つ買って、クリスマスに聴こうかとも思っています。

ミ(`w´彡)
2008.11.25 Tue 09:03 URL [ Edit ]

rudolf2006さん、おはようございます。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

大岡昇平の本を久しぶりで読みました。
これは、藤本義一が編集した短編集「心中」に含まれています。こういう編集もので初めて出会う小説というのはわりに多い気がします。

「メサイア」シリーズ、もうしばらく続く予定です。
クリスマスまで続けられればよいかと。
何枚か聴きましたが、まだ聴いていないCDのほうが圧倒的に多く、途方にくれます。
楽しみが残っているともいえるのですが^^
2008.11.26 12:52
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