エレナ・ポーター(村岡花子訳)の「スウ姉さん」を読む。
これは、幼少の頃に母を亡くし、銀行の元頭取で認知症の父と、わがままな弟と妹を抱えながら、ピアニストになる道を目指す女性の話。
ピアノを愛しながらも、日常生活の雑事に追われて、思うままにレッスンができない。でも、不平は心の奥底にそっと忍ばせる。
「一生涯をやさしい、我慢づよいスウ姉さんとして過ごすのがいちばん正しいことなのかもしれない。自分のそうした姿を想像に描くことはたやすくできた」。
そんな彼女をずっと見ていた、プレストン小母さんが、最後の矢を放ち、彼女を幸福に導く。
まるで、朝の連ドラのような話ではあるが、シンプルな味わいのある名品である。
ヴァントの指揮で、ブルックナーの交響曲4番「ロマンティック」を聴く。
彼が指揮をするブルックナーは、80年代前半にエアチェックした北ドイツ放送交響楽団との8番、そして、後年に録音したベルリン・フィルとの同じく8盤を聴いた。いい演奏ではあると思ったが、いまひとつ心に食い込んでこなかった。なので、ヴァントのブルックナーを敬遠していた。
しかし、この4番は、いい。
鳴るべきところはしっかり鳴っており、小細工もうまくはまっている。北ドイツ放送交響楽団の状態もよいし、適度な残響も雰囲気を出している。
オーケストラは明晰に響き、普段は聴こえないような木管楽器の音もあらわれる。
ヴァントはこの後、ベルリン・フィルやミュンヘン・フィルともこの4番を録音しているそうだ。
そちらはまだ聴いていないが、全体のバランス感、録音の良さで、このディスクは「ロマンティック」のトップクラスに挙げたい。
1990年6月、ハンブルク、ムジーク・ハレでの録音。
冷やし中華とツイッター始めました!インド洋を望む。
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