ブラームス 交響曲全集 エンリケ・バティス指揮 メキシコ州立交響楽団高橋秀実の「趣味は何ですか?」を読む。
実際にこれを訊かれたとき、なんと答えよう。読書、音楽鑑賞、散歩、朝寝。どれもこれといってインパクトがなく、訊いた人が感銘を受けることはなさそうだ。
著者もそれで悩んでいて、趣味とはなんなのかを突き止めるためにさまざまな人にインタビューを試みる。
鉄道、航空無線、蕎麦、ヨガ、切手、エコ、防災、カメ、ボウリング、階段、ガーデニング、登山・・・。
それぞれ著者は体験するが、のめりこむほどにはならない。で、最終的な結論は、立山連峰を見渡すことのできる室堂平で考えたものだった。
「私は石に向かって手を合わせた。そして立山にこう感謝したのである。生きていることをこうして味わえることだけで十分です。それ以上の趣味は要りません、と」
そう、これからは堂々と趣味はありません、と答えればいいのだ。さてできるかな?
バティスのブラームス全集を聴く。そのなかから4番を。
これは剛直な演奏だ。冒頭からもったいぶったところが微塵もなく、速めのテンポで縦割りにキチキチと進んでゆく。
オケの音はじつによく鳴っていて、色は明るい。弦の足並みは揃っているし、フルートとホルンのハーモニーなど、良く溶け合っていて気持ちがいい。オケの技量に不足はない。
全体的には、メキシコ出身の指揮者のラテンの血が騒いでいるような明快なもので、特に2番などはあっけらかんとしたものだった。しかし、この4番となるとブラームスの哀愁が行間からじわじわとにじみ出ており、それが奥床しくて深いのである。
全曲を通して、ぐいぐいとしたインテンポで36分。かなり速い部類になるだろうが、聴き始めると慣れてくる。3,4楽章ではティンパニがこれでもかというくらい弾けるように炸裂。ストレスがふっ飛んでいくようだ。
面白かった。
1997年6月の録音。
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