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"色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年"、ウゴルスキ、ブラームス"ピアノソナタ1番"

2013.05.03 - ブラームス
 
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ブラームス : ピアノ・ソナタ第1番 ウゴルスキ(Pf)




村上春樹の「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」を読む。

これは、「鉄」の中年男性がガールフレンドの勧めで大学時代のトラウマを解消すべく、捜索にあたってゆく話。
「鉄」といってもいろいろあるが、彼は駅に興味を持っていて、うまいことに駅の設計を生業としている。どこにでもいそうな鉄道オタクでありつつ、その夢を実現できる意志の強さ、というキャラクターがひとつのキーワードになっている。
高校時代の友人との出会いのシーンが滅法面白い。話そのものは驚かされるものではないものの、レトリックが冴えていて一気に引き込まれる。実にスリリング。
ガールフレンドとの恋愛の道のりも並行して描かれているが、それは刺身のツマのよう。

ラストの、新宿駅は一日に350万人近くの人々が通過していく云々、のくだりは月並み。我々サラリーマンにとっては当たり前の世界でありすぎて、今更感を否めない。













ウゴルスキのピアノによるブラームスを聴く。
彼は硬質な音色でもって、精巧にブラームスを描いている。重心の低く重い低音から輝かしい高音まで、ひとつひとつの音が粒だっていて気持ちがいい。

ブラームスのピアノソナタはもともと重厚でクドい。それが魅力であるわけだが、ウゴルスキのやりかたがまたけっこうクドい。ここぞというときにテンポをぐっと落として、まとわりつくように奏でる。湿った夜の帳がそろそろとおりてくるように。
3楽章がことに好きだ。半音階をまじえた独特のメロディーが、快活なリズムでもってぐんぐん前に進んでゆく音楽。活発であるにも関わらず夜を感じさせずにはいられないところ(私だけか?)、いかにもブラームスらしい。メインテーマの下降和音のくだりは、ベルリオーズの「ファウストのの劫罰」の「地獄の首都」を思いおこさせる。ウゴルスキのタッチは明快で、それがまた感興をそそる。



1996年4,6月、ベルリンでの録音。
















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Comment

ウゴルスキのブラームス - yoshimi

こんばんは。
ウゴルスキのブラームスはとっても良いですね。
私の持っているCDは、ピアノソナタ3曲・ヘンデルバリーション・左手のためのシャコンヌが入ってます。
ヘンデルとシャコンヌが目的で手に入れたものなので、ソナタの方はほとんど聴いていなかったような...。

ウゴルスキのブラームスでは、シャコンヌが特に有名ですね。
スタジオ録音よりも来日公演のライブ演奏(Youtubeにあります)の方が、さらにウゴルスキ独自の世界になってます。(私はこのライブの方が好きなのですが)

ウゴルスキのヘンデルバリエーションは、ダイナミックレンジが広く、緩急自在で明暗のコントラストも強く、かなりドラマティックな演奏です。
記事を読んだ限りでは、ソナタも方向性は似ているように感じました。
彼のブラームスとは波長が合うのか、元々かなり好きなので、ピアノ・ソナタを聴けば気に入ると思います。

2013.05.05 Sun 00:16 URL [ Edit ]

いい曲のいい演奏。 - 管理人:芳野達司

yoshimiさん、こんにちは。
実は、ブラームスの1番2番のソナタを聴くのは、これが初めてだったんです。3番は好きでよく聴くのですが、なぜかこれらは機会がなくて放置していました。
聴いてみると、3番にひけをとらないくらいにロマンティックであって、さらに軽やかさも感じます。
ウゴルスキのブラームスはやはり良いですか。正解でした!
あとこのCDにはシャコンヌも入っています。これがまたいいです。最初からピアノのために書かれたのじゃないかと思えるほど、違和感なくしっくりきます。それに深い。
来日公演のライブ演奏があるのですか。観てみますね。
2013.05.05 18:08
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