シューベルト : 美しき水車小屋の娘 スコウフス(Br) ドイチェ(Pf)奥田英朗の「ホットコーナー」を読む。
これは伊良部医師シリーズの一編。
プロ野球の一線級の三塁手が、ある日突然、1塁に送球できなくなるという状態になり、伊良部医師の手に罹る。
野球に興味を持った伊良部は、三塁手相手にキャッチボールをして遊ぶが、鋭い質問をぶつけてくる。
「コントロールってなんなの?」。
三塁手は答えに窮し、また悩んでしまう。たしかに、コントロールって、なんだろう。
ラストは、伊良部に誘われた草野球で、子供たち相手の遊びに制球のヒントを掴む。
この伊良部シリーズ、患者はじつに様々な職種の人たちであるが、それぞれの職業の深さを端的に描いていて素晴らしい。
ボー・スコウススとヘルムート・ドイチェによる「美しき水車小屋の娘」を聴く。
この曲は、テノールによるものが好きだ。
シュライアーをはじめ、ヴンダーリヒ、アライサ、ヘフリガー、ヨゼフ・プロチュカ、プレガルディエン・・・。
この曲には、テノールが合う。
ディースカウやプライはもちろんうまいし美しいけれど、声そのものに重量感があるので、あまりしっくりこないのだ。
そんな懸念を抱きつつスコウフス盤を聴いてみたが、これはバリトンにしては好きな演奏だ。
声が柔らかくて若々しいところがいいし、ドイチェの手だれのピアノが最高。
なかでも気に入ったのは「水車職人の花」。このみずみずしさ、テノールにも引けを取らない。
『そしてあの人が目を閉じて、
甘い、甘い安らぎの中で眠るとき、
夢の姿となってあの人にささやいておくれ。
「忘れないで、僕を忘れないで!」と。
これが僕の考えていることなのだ。』
1997年3月、バンベルクでの録音。
オーストラリアのパースから、キングスパークの朝。
行ってみたいな。
PR