ブラームス「ピアノ協奏曲第2番」 ブレンデル(Pf) ハイティンク指揮コンセルトヘボウ管弦楽団浅田次郎の「ハッピー・リタイアメント」は、天下り組織の金融保証機関を舞台にした小説。この組織、業務実態がないため、9時に来て5時までいれば何をしていてもよいという天国のような環境。
ワタシならば、昼寝三昧の生活に明け暮れて、そのまま朽ちてゆくだろう。
そんななか、元財務官僚と元自衛官が教育係と手を組んで、現状打開に奮闘する。
話の素材はいいものの、後半にいくにつれてだんだん焦点がボヤけてくるような気がした。ことにラストは冴えているとは言い難い。
浅田次郎にしては、いまひとつの出来。才人とはいえ10割バッターではない。
さて、ブレンデルのブラームスを聴く。
この曲の演奏の良し悪しは、冒頭で決まると思う。ホルンの響きがどのくらい素晴らしいかで、全容が見えてくる。
ホルンがいまひとつなんだけど、全体を通すといいねえ、というようなものもたまにはある。でも逆に、ホルンだけはいいんだけど、ほかはサッパリですなあ、なんていう演奏は今まで聴いたことがない。協奏曲にしてはオーケストラの比重が大きいからとか、最初がよければ勢いづきやすいといった要因が考えられる。
あるいは、デキるピアニストには優秀なオケをあてがうというような、身も蓋も無いビジネス上の都合も少しはあるのかもしれないが、それでいい演奏が保証されるほどブラームスは甘くはないだろう。
ともかく、このコンセルトヘボウのホルンは素晴らしい。おおらかで毅然としていて、たっぷりとした重量感がある。最初の2秒で勝負あった感じ。
同じようにコクのある厚い響きを聴かせるブレンデルもいい。ときに神経質なくらいに細部を克明に描いているけれど、意外にコセコセしていない。なめらかで広いスケールがあって、聴き応えじゅうぶん。
1973年12月、アムステルダム、コンセルトヘボウでの録音
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