ブラームス ヴァイオリン協奏曲 スターン(Vn)オーマンディ指揮フィラデルフィア管永井均の「子どものための哲学対話」を読む。
中学二年生の『ぼく』と猫の『ぺネトレ』との哲学的対話。「人間はなんのために生きているのか?」なんてことを、ペネトレと『ぼく』が答えを探ってゆく。
「元気が出ないとき、どうしたらいいか?」との問いには、ペネロペがうまい答えを用意している。
「いやなことほど、心の中で何度も反復したくなるし、いやな感情ほど、それにひたりたくなるんだよ。わすれてしまうと、自分にとってなにか重大なものが失われてしまうような気がするのさ。」
そんなときはどうすればいいの?という『ぼく』の問いに、
「そういうことに、自分自身のやりかたを発明するってことが、おとなになるってことなんだよ。」
おまえは加藤諦三かっ!
というわけで(?)子どものためのといっても、ヘタな新書よりも内容は濃い本なのであった。
スターンとオーマンディのブラームス。
スターンのヴァイオリンは、中低音域に重きを置いたもの。松脂が飛翔する様が見えるよう。
音そのものは弟子にあたるズーカーマンのほうが伸びがあって美しいと思うが、キレのよさではスターンも負けていない。
スターンのブラームスといえば最後に入れたメータとの録音のほうがどちらかといえば有名かもしれないが、こちらのほうが若々しい覇気があってよいように思う。
オーマンディのオケは素晴らしい。全体的に木管をやや強調したバランスになっていて、それが透明感と立体感を生んでいる。とても見通しの良いブラームスだ。
なかでも、2楽章のオーボエは軽やかさに風格を兼ね備えたもので、今まで聴いた中では、ムターとやったカラヤン/ベルリン・フィル、グリュミオーとのベイヌム/コンセルトヘボウ管に比肩する。
明瞭さとスケールの大きさにおいて、この曲の多くの録音のなかでもトップクラスの演奏じゃないかと思う。
録音もいい。これが本当に50年代のものなのか?
1959年11月2日の録音。
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