ジュリーニ指揮シカゴ交響楽団の演奏で、ブラームスの交響曲4番を聴く。
この曲を中学生の頃から聴き始めた。近所の水道端、小石川、真砂の図書館で借りたレコードを中心に。いくつか聴いた中で、マゼール/クリーヴランド管弦楽団と、バルビローリ/ウイーン・フィルの演奏に感銘を受けた。というか、滂沱の涙。なんでこんなにいいのか、わけがわからなかった。両者は、全然スタイルが違うのに。それで、この4番をブラームスの交響曲では一番気に入った。
それから40年弱。いろいろ好みは変わった。ここ10年では、チェリビダッケ/シュトゥットガルト放送響や、ヨッフム/ロンドン・フィルにも感動して、ディスクを大事にしている。
マゼールとバルビローリに関しては、社会人になってからCDを聴いて、それぞれいくぶん印象が変わった。マゼールの、クリーヴランド時代特有のポキポキ感はやはり私の腑に落ちるようで、今聴いてとても面白い。バルビローリのは、最近聴き直したが、昔ほどの感動は得られなかった。LPとCDの違いとか再生装置の問題が大きいとは思うが、ウイーン・フィルのこってりとした甘い響きを感じられなかったのである。
それとは逆に、ジュリーニ/シカゴ響の演奏は、昔は別になんの感慨もなかったが、このたびCDで聴き直したらとてもよかった。
ひとつあげるとすれば、1楽章の、展開部から再現部にはいるところ。ゆらゆらと立ちあがるヴァイオリンの嘆き。滋味に溢れた生命力。深い安らぎ。この味わい、子供にはわかりにくいだろう。
当時のシカゴは、ブラスの威力ばかり評価が高いが、実は弦楽器がいい。上質なシルクのネクタイのような手触りである。この質感が、4番の演奏を支えていると言ってもいい。
残念なことに、録音状態はいまひとつ。
1969年10月、シカゴ、メディナ・テンプルでの録音。
初夏。
重版できました。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR