シフのピアノで、ブラームスの「ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ」を聴く。
このCDには、主題の原曲であるヘンデルの組曲が収録されている。全曲で4曲、10分弱であるところの3曲目にこのテーマが使われている。
そっくりそのまま(なのはブラームスなのだが)なので、ピアノ曲に明るくない私でもわかりやすい。ついでに、このヘンデルの曲も変奏曲なのである。技術的にはさほど難しくなさそうなので子供にも弾けるだろう。ただ、小さいながらもヘンデル、さすがの風格。さながら、小宇宙。
この曲に舌鼓を打ってから、ブラームスに入るという選曲になっている。ありそうでない、センス。素晴らしい。
シフのブラームスは、端正。
「ブラームスは過去の大作曲家であったヘンデルに対する絶対的な敬愛と、偉大なるバッハが残した対位法の技法を、完全に結び付けたといえる」と細川節子が言うとおり、シフは古典的な均整をかたくなに守りつつ、行間に深い情緒を纏わせている。
25番目の変奏は、全体的にスタッカートを強調して躍動感を生み出している。アタッカで入るフーガも同様で、軽やかにして明晰。シフはこの演奏で、幅の広さよりもフォームの美しさを浮き立たせようとしているふうに窺える。
ヘンデル・ヴァリエーション、このピアノも、いい。
1994年12月、アムステルダム・コンセルトヘボウでのライヴ録音。
カフェでいっぷく。
重版できました。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR