ブラームス ピアノ協奏曲第2番 アラウ(Pf)ジュリーニ指揮フィルハーモニア管「ゴルゴ13 ベストスナイプ」を読む。
フィラデルフィア管弦楽団のソリストの依頼でライバルのヴァイオリニストの演奏中に楽器の弦を切ってくれという依頼から、アメリカ大統領の依頼で破損した宇宙衛星を宇宙に行って始末しろというものまで、全6話収録。
スナイパーとしての腕は、もちろん超一級であり、その仕事に一分の隙も見当たらない。
依頼を成し遂げるためには自分が拷問にあうことも辞さないスーパーマンのゴルゴだが、たまには情をふとみせる。
それは、銃の製造を手がける老練な職人であったり、ダイヤモンドのカットを行う親方であり、縁の下の力持ちの役割の人に対するものだ。目的を遂行するためにはどんな手段も辞さないが、自分の仕事を陰でサポートしてくれる人たちに、優しい眼を注ぐところがとても魅力的なのだった。
アラウとジュリーニのブラームス。
この2番は、同曲の録音のなかでベストスリーに入れたい名演である。
冒頭のホルンから、不思議なふくよかさのある演奏で、そのふくらみは最後まで持続する。
この曲は、ブラームスが暖かいイタリアに憧れて作った曲ということは有名な話であるが、この演奏ほど温暖で柔らかい演奏も珍しいのじゃないかと思う。
アラウというピアニストは、晩年になって急激にスゴイ演奏をし始めた印象があって、70年代まではさほどいいものはないのじゃないかと勝手に思っていたけど、ここではとてもスケールの大きい、包容力のあるピアノを聴かせてくれる。実におおらかで自在なピアノであって、聴いているとなにか大きなものに包まれているような安心感がある。
オケもいい。普段、重量感のある音を醸し出すフィルハーモニア管弦楽団が、ここではカラッと明るい響きを出しているのは、ジュリーニの手腕かもしれない。湿度の少ない明快さがこの演奏の基調になっている。緊張を帯びた弦の輝かしさ、木管のあっけらかんとした直截さが胸を打つ。
1962年、ロンドンでの録音。
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