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テイトのバックス「小オーケストラの3つの小品」

2008.06.21 - バックス


テイト

バックス、バターワース、ブリッジ作品集 テイト指揮イギリス室内管弦楽団


ジョイスの「ダブリンの市民」を読む。1年近くかかってしまった。
これは、15編からなる短編集で、いずれもダブリンが舞台になっている。この街に住む人々の、まったくドラマチックとはいえない平凡な日常生活を、淡々と描いている。
好奇心旺盛な子供、昼間にぶらぶらしているおじさん、酔っ払い、妻に嫉妬する男など、主役はみんなどこにでもいる普通の人々だ。
日常世界の些細なことをじつに淡々と念入りに描いているものの、ストーリーそのものに魅力があるわけではないから、一気呵成に読ませられるものではない。むしろ退屈といえる。
毎日の生活というものはいかにも退屈であるけれど、それを受け入れている人々の滑稽さ、健気さが、じんわりと心に染みてくるのである。


ジョイス


アイルランド市民の喜びや悲しみを味わったあとは、ロンドンに生まれてアイルランドで世を去ったバックスの作品を。
「小オーケストラの3つの小品」は、彼が30代半ばの1928年に作られている。

「宵の断片」
冒頭の木管の響きが厚みのある雲と穏やかな晩餐を連想させ、その後に登場する独奏ヴァイオリンとそれを煽らんばかりのオケの掛け合いのスリリングさに一日の終わりの慌しさを感じる。

「アイルランドの風景」
くぐもった弦の導入から、ふたつのヴァイオリンとハープによるメランコリックな世界が展開する。どんよりとした灰色の風景だ。

「陽のなかのダンス」
一転して、音楽は快活で動きの激しいものになる。腰の落ち着いたリズミカルさ。
つやがあってコクのある弦にのって、フルートやオーボエ、コーラングレなどの木管楽器が、これもしっとりとした響きを聴かせる。

1985年、ロンドンでの録音。
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Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま こんばんは

ジョイスの「ダブリンの市民」
平凡な日常を生きることの大事さ、のようなものを教えてくれる感じもしますね〜。真面目に不真面目、不真面目に真面目、あああ、訳が分からなくなりました、爆〜。

バックスの作品は、マリナーの指揮したものを持っているんですが、吉田さんが挙げられている曲は、収録されていないようです。
イギリスのこの時期の作曲家たち、素敵な曲を書いていますよね〜。

ミ(`w´彡)
2008.06.21 Sat 22:51 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

ジョイスの「ダブリンの市民」ですが、短編の寄せ集めだから簡単に読めるだろうと踏んでいたのですが、逆に時間がかかってしまいました。
山アリ谷アリのストーリーではなく、平凡な人々の平凡な日々を描いているので、正直言ってすらすら読めるような面白さはないのですが、不思議に手ごたえのある作品です。面白おかしくはないにせよ、日常生活の重みがあります。

バックスの音楽、普段あんまり聴いているわけではありませんが、なかなか面白いです。静かなところが特によいようで、これを聴きながらホンモノの落日をみてビール、なんていうのは最高のシチュエーションじゃないかなと思います。
20世紀前半のイギリス音楽には、いいものがありますね。
2008.06.22 20:56
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