ブラームス 弦楽六重奏曲「アニキ」開高健の「知的な痴的な教養講座」はウンチク満載のエロ・エッセイ。
イクときに叫ぶセリフが国によってマチマチだとか、隣の畑のブドウのワインの味が違うのは、女の体のアレとアレの味の違いのようなものだとか。身も蓋もない話ではあるが、この人が語るといやらしくないのだなあ。ワタシがいうのもなんだが。
なかでも、このくだりは洒落ている。
「デカンタージュが教えることは、なにか? それは、一本のワインには二人の女が入っているということなんだ、一人は、栓をあけたばかりの処女、もう一人は、それが熟女になった姿である。一本のワインで処女と熟女のふたつが楽しめる」。
「ただし、人間の女とワインも違うところがある。ワインは栓をあけて処女を楽しむが、人間の処女は栓をして味わうという一点である」。
整っていますナ。
メニューインたちが演奏したブラームスの6重奏曲は、かねてから聴いてみたかったもの。常設の団体ではなく、普段はソリストで活動していたメンバーによるものなので、聴く前はアンサンブルがどうかなと気になったが、ぜんぜん問題がない。完璧無比とはいえないかもしれないが、むしろ適度に空気が入り込んでいる握り寿司のような、このくらいの按配のほうが温かみがあるというもの。みんな均等の大きさで弾かれていて、バランスもよいのだ。みんな実に味わい深い(枯れた、とまでは言わないけどネ)弾きぶりで、なかでもジャンドロンのソロはいい。堅実ななかにほんのりとした色がある
この曲の2楽章はルイ・マルの映画「恋人たち」に採用されたことで有名になっているが、どちらかといえば、ボロディンの四重奏を思わせる哀愁が濃い1楽章に惹かれる。若かりしブラームスのモンモン感がたまらない。
ユーディ・メニューイン
ロバート・マスターズ
セシルアロノヴィッツ
エルンスト・ウォルフィッシュ
モーリス・ジャンドロン
デレク・シンプソン
1963年4月、ロンドン、アビーロード・第一スタジオでの録音。
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なんだかんだ言って、初期の小説と後期のエッセイくらしか読んでいないのです。だから偉そうに語ることはできません。そんな乏しい経験から無理やりなのですが、小説におけるけだるさと瞬発力、そしてエッセイにおいての知的(痴的?)な洒落っ気は天下一品だと思うのです。
リベラさんのこと、今日から「アニキ」と呼ばせてもらいます!?