本年2度目の都民芸術フェスティバル。都民じゃないが、勤務先は東京なのでまあ許してほしい。
梅田の指揮を聴くのはこれが2回目。一昨年の端正なブラームス(このときは日本フィル)が気に入ったので、今年もこの指揮者を選んでみたわけ。これは正解だった。
シベリウス・プログラム
フィンランディア
ヴァイオリン協奏曲 ヴァイオリン:二村英仁
交響曲第2番
1曲目はダイ・ハード。独立運動の鼓舞というよりも、飛行場での大活劇シーンを思い出さずにはいられなくなってしまった。エンジンをアイドリング、といっても金管やティンパニはもうすでにかなり熱を帯びていた。
ヴァイオリン協奏曲は、この曲にしばしば感じる冷やかな感触というよりも、温もりをじんわりと感じる演奏。二村のヴァイオリンは繊細。ダイナミックよりも旋律をおおらかに流すことに重点を置いているようだった。音がいくぶん小さく聴こえたのは、この大ホールでは致し方ないのかな(しかも2階のレフトの屋根の下だったので、席は万全ではなかったこともあり)。ただ、オーケストラが被るところで、ヴァイオリンの音がかき消されることはなかった。ヴァイオリンは4プルト、コントラバス4台を要していたから、オケは決して小さくなかったわけで、だからこれは指揮者の絶妙な采配によるところなのだけれど、あまりに見事なのでちょっと不思議ですらあった。
休憩を挟んでのシンフォニーは、今日の白眉と言えるのじゃないかと思う。かなり控えめに言っても。
弦の整然とした入りから、アクセントの効いた木管の立ち上がりを聴いて、いい予感がした。テンポは中庸のなかの中庸といったところで違和感はない。逆に言えばテンポに関してはことさら新味はないのだが、この演奏は変わり種を狙ったものではなかった。キッチリ整った合奏と、キレのある金管とティンパニの楔、そして要所要所で効かせた全休符からのタメ。渋い味付けがじわじわと効果をあげていた。
「がまんしてがまんして爆発!」。『昭和残侠伝』シリーズの高倉健ではないが、それまでの退屈とも言える反復が力を溜めにためて、最後に放ったファンファーレはじつに力強いものだった。輝かしい全奏の和音が、残響に解けてゆくところはなんとも美しく、久しぶりに感動。
都響はアンサンブルも個人技も安定していて、レベルが高い。なかでもティンパニはいい。きちんと皮の音がする。
梅田俊明にはおおいに注目ダ。
2011年3月5日、東京芸術劇場。
PR