ビゼー「カルメン」 マゼール指揮ベルリン・ドイツ・オペラ、他初めての屋形船で忘年会。この寒い時期に船などあるかと思ったけど、乗ってみれば面白い。
品川からお台場に出て、しばらく停泊。
周囲は、同じように夜景を楽しむ屋形船で大賑わい。
お台場の海から見たフジテレビ(写りが悪くてよくわかりませんね)
それから隅田川を下って、勝鬨橋をくぐってふたたび品川へ。
どういうルートを通ってきたのか、いまひとつ腑に落ちない。海の地理は陸とはだいぶ違みたい。
マゼールの『カルメン』といえば、彼がフランス国立管を振った映画がある。タイトルロールのジュリア・ミゲネス・ジョンソンが、野性的香りをプンプンさせた魅力的な映像で、LDで何度か観たものだ。
今回聴いたのは、ベルリンドイツオペラとのもの。
こちらもいい演奏だ。
前奏曲からキレのある響きに魅せられる。
こちらの演奏のほうが、マゼールのケレン味がよりはっきり出ているように感じる。
もっともそれが強いのが、始まってすぐに登場する少年合唱。「タッタッタタララー、タララッタララッタッター」と、なんとワンパクで元気なことだろう。リズムを思い切って強調させて、いままさに悪戯にとりかかるようなやんちゃぶり。アンサンブルの荒らさが、元気の良さに拍車をかけているみたい。
それから1幕の最後のほうで歌われるカルメンとホセとのワルツ。テンポの変化は自在なのに、流れはごく自然。それについてゆく歌手は大変なのだろうと想像するが(もしくは歌手主導もありうるが…ここは指揮者ペースなのではないかと想像する)、うまい具合にぴったりと合っている。ワルツのリズムが伸びたり縮んだりずり上げたり、やりたい放題に聴こえるけど、呼吸に無理がないから違和感がない。
歌手では、まずモッフォ。フランス語特有の鼻にかかる声が色気たっぷり、こんなヒトに誘惑されたら、なにも考えずについていってしまうだろう。歌声そのものは可憐なので、下品にならない。
ドナートのミカエラもすばらしい。軽ろやかで情感たっぷりな歌が、ミカエラという女の薄幸さを浮き立たせていて、思わず同情してしまう。こういう女に誘われたら、尻尾を振ってついていってしまうに違いない。
カプッチッリのエスカミーリョ。これ以上、立派に歌うことが可能なのだろうか。圧倒的な声量と輝かしさ。彼が登場すると、空気が一変し、周囲の人物がサアッと道を譲るように感じる。「十戒」状態だ。
ドン・ホセを歌うコレッリもよい。張りがあって、表情が細やか、優柔不断な性格をうまく滲み出している。
モッフォもドナートも魅力的すぎて、どちらを選ぶかといわれれば男としてはおおいに困るところだ。うーん、これはドン・ホセではなくても迷ましい。
ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団は、ことに男声の剛直な歌声に魅力があるが、ここでもすきっ腹に響き渡る強烈な歌声を聴かせてくれる。
歌手は色とりどりに、個性いっぱい歌いきっているのに全体のまとまりがよいのは、マゼールの引き締まったリードにあるように思う。
カルメン:アンナ・モッフォ
ドン・ホセ:フランコ・コレッリ
エスカミーリョ:ピエロ・カプッチッリ
ミカエラ:ヘレン・ドナート
スニガ:ジョゼ・ヴァン・ダム
モラレス:バリー・マクダニエル
フラスキータ:アーリーン・オジェー
メルセデス:ジャーヌ・ベルビエ
ダンカイロ:ジャン=クリストフ・ベノワ
レメンダート:カール=エルンスト・メルカー
ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団&合唱団
シェーネベルク少年合唱団
ロリン・マゼール(指揮)
1970年、ベルリンでの録音。
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