バッハ管弦楽組曲2 3 マゼール指揮ベルリン放送響「個々の仕事をいちいち吟味しなくとも、気晴らしという観点から眺めれば、それだけで十分である」
(パスカル「パンセ」断章137 鹿島茂訳)
マゼールのバッハを聴く。
正攻法なのか変化球なのか悩む演奏だ。曲によって様相が異なる。
例えば「序曲」は重厚そのもので、中庸なテンポでもって落ち着いた演奏になっているのに対し、次の「ロンド」ではつんのめりそうなテンポでぐいぐいとオケを引っ張っている。アンサンブルも粗い。この対比は独特を超えて違和感がある。
次の「サラバンド」からは、また中くらいのテンポで、厚い響きを聴かせている。ことに「メヌエット」は堂々たるものだ。スタイルとしてはオーソドックスといえる。
というわけで、全体を通すと「ロンド」のみが浮き上がっているよう。これは不思議な後味の残る演奏だ。
フルートのブールダンは達者。温度が少し高めの、密度の濃い音がいい。速いテンポでも端正な佇まいで全体を引き締めている。
マゼールは60年代にいくつかのバッハを録音しているが、最近はあまり演奏していないようだ。
マタイやロ短調あたり、聴いてみたいものだ。
1965年11月の録音。
PR