ジュリアン・ブリーム/バッハ作品集お金を拾った。
その喫茶店は、かなり空いていた。4人掛けのテーブルについたときに、椅子の上に、なんだか寂しそうに1円玉が落ちているのに気がついた。
ここにいた客が、財布から小銭を取り出すときに落としてしまったのだろう。
注文を取りにきたウェイトレスに渡したのだが、このやりとりには当然のことながら何の事務的な手続きはなく、まるで、食べ終えたサンドイッチの皿をさげてもらうかのように、ごく自然に行われた。
これが1円玉ではなく、1万円札だったらだいぶ状況は違うだろう。
ウェイトレスも、ちょっとあわてて、店長に相談にいくに違いない。
昔はなぜかお金をよく拾った。小学校の頃に、ときどき10円玉を拾って交番に届けに行くと、おまわりさんが「じゃあ、これは預かっておくから、これはおまわりさんからのお駄賃だよ」といいつつ、渡した十円を受け取って自分の財布から10円玉を取り出して私にくれる、というようなことが何回かあったような気がする。
これが100円だったりするとやや微妙で、おまわりさんは明らかに面倒くさそうに対処したものだ。
「100円あげるのはちょっと痛いし、書類書くのは面倒だしなあ」という雰囲気がありありで、子供なりに、ちょっと悪いことをしちゃったかな、という居心地の悪さを感じたりしたものだ。
それが千円札だと、また状況が違うのだろうが、幸か不幸か、札を拾ったことはないな。
今日のウェイトレスは、「私からのお駄賃よ!」なんていって財布と交換した1円をくれたりするようなことはなかったし、「天に代わってお仕置きよ」とかいってお仕置きされることも残念ながらなかった(当然)。
ジュリアン・ブリームの演奏でバッハの「シャコンヌ」。
無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータの1曲だが、これはギター版。無伴奏の弦楽器曲として15分というのは大曲に属するだろう。
ギターの音色というものは、自分の過去の楽しかったことや悲しいことの記憶をを呼び起こさせる力があるが、このバッハの激辛の音楽にブリームはほんの少しの砂糖を散りばめて、ギリギリの大人の甘さを醸し出している。音と沈黙との陰影が素晴らしく、何度聴いても新たな感銘を感じさせてくれる音楽である。★音楽blogランキング!★にほんブログ村 クラシックブログ無料メルマガ『究極の娯楽 -古典音楽の毒と薬-』 読者登録フォーム
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