カザルス指揮マルボロ祝祭管弦楽団の演奏で、バッハのブランデンブルク協奏曲5番を聴きました(1964年7月の録音)。
この曲は鍵盤楽器が活躍します。昨今はやりである古楽器の演奏ではチェンバロが使われることが多いですが、20世紀前半から半ばにかけて、ピアノが多く使われていたことが見受けられます。
このディスクもそうです。1964年と言えば、ルドルフ・ゼルキンはすでに押しも押されぬ巨匠であったわけですが、こうしたことをやっています。じつに楽しそうに。
鍵盤楽器がピアノであることについて、この演奏についてはまったく何の違和感もありません。まるでバッハはピアノを念頭に置いて作ったかのように。
ゼルキンのピアノは見事なもの。がっちりとした骨格を基調に、ときには流麗に、ときには甘く弾いています。とりわけ、1楽章の長大なカデンツァは素晴らしい。天衣無縫とも言うべき軽やかな知性。涙を禁じえません。バッハ演奏のひとつの金字塔といってもいいくらい。
カザルスの指揮は剛毅でありながら、微妙に強弱の変化をつけていて、音楽に大きな表情を生み出しています。なんと生命力に満ちた演奏でしょうか!
ルドルフ・ゼルキン(ピアノ)
アレクサンダー・シュナイダー(ヴァイオリン)
オルヌルフ・グルブランセン(フルート)、他
パースのビッグムーン。
PR