シェークスピア(小田島雄志訳)の「ハムレット」を読む。
「このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ。どちらがりっぱな生き方か、このまま心のうちに暴虐な運命の矢弾をじっと耐えしのぶことか、それとも寄せくる怒涛の苦難に敢然と立ちむかい、闘ってそれに終止符をうつことか」
ハムレットは王子にしては、弱よわしい。考えがブレるし、意志が強いとは言い難い。実父を殺して王位についた男に対して復讐を誓うのだが、なかなか捗らないので、読んでいるほうはヤキモキする。口は達者なのだが、実行力に乏しいのだ。途中で狂人になったふりをして周りをだまくらかして隙を見せるなど、なんだかんだと遠回りな策略を練っている間に、恋人であるオフェーリアを死なせてしまう。
最後は、周囲の協力を得てようやっと復讐を晴らすが、偶然感満載でヒヤヒヤする。
よって、この作品の読みどころは、ハムレットという青年の弱さにあると思う。迷いや弱さは普遍的なもの。時空を超えた国の王子であっても、体には生ぬるい血が流れていることを思い知らされる。共感できるヒーローと言える。
ジュリーニ指揮コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏で、ドヴォルザークの交響曲8番を聴く(1990年12月、アムステルダム、コンセルトヘボウでの録音)。
ジュリーニはこの曲を3回セッション録音している。好きだし、得意だったのだろう。
最初はフィルハーモニア管弦楽団とEMIで(1962年)、次はシカゴ交響楽団とDGに(1978年)、3番目がこれ。演奏は、どれも優劣つけ難いくらいにレベルが高い。ジュリーニのアプローチは、基本的によく歌い、全体の見通しがいいという点で共通している。でもひとつひとつは微妙に違う。POのは、荒削りなところが若々しく、覇気に満ちた演奏、CSOとものはオーケストラの機能を生かしたメタリックな音色が素晴らしい。そしてACO(RCOか。。)とのものは、遅めのテンポでじっくりと醸成させたコクを惜しげもなく披露している。
オーケストラの個性が、明確に出ているところが面白い。それは彼が、管弦楽をいたずらにこねくり回していないことを示している。
この演奏、どの楽章も素晴らしいが、今日の気分では3楽章。そうっと入る出だしの、なんてデリケートなこと! それ以降も、ひとつひとつの音符を慈しむように奏でている。コンセルトヘボウの弦楽器が、実に濃厚、滋味もたっぷり。ヴィオラは感動的。
図書館。
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