ジョン・ダニング(宮脇孝雄訳)の「死の蔵書」を読む。
古書の掘り出し屋が殺される。この事件を、無類の本好きであるジョーンウェイ刑事が担当するが、いざこざに巻き込まれ、意外な展開が繰り広げられる。
ここで登場する「掘り出し屋」とは、ブックオフで入手した本をamazonで売るというようなセドリではなく、数百ドルから数千ドルといった値がつく古書を取り扱う商売をする人のことを指している。
対象となる本は、ヘミングウェーやポーやフィッツジェラルドといった作家たちの初版本。こうした本を、状態のいいままで大量に保管しているコレクターが存在するのだが、彼らが物語のキーポイントになっている。
古書に関するうんちくが楽しく、また推理ものとしてもしっかり構成されているので、500ページを楽しくあっという間に読むことができる。
上質なミステリーである。
オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏で、チャイコフスキーの交響曲1番「冬の日の幻想」を聴く。
これは予想以上に素晴らしい演奏。これまで「冬の日の幻想」といえば、スマートなティルソン・トーマス盤や泥臭いロストロポーヴィチ盤、豪奢なカラヤン盤、軟投のプレトニョフ盤などが印象に残っているが、これはなかでもトップクラスに入れなければならないだろう。
まず、ソロ楽器がいい。オーボエは哀しみを湛えながらも芯がしっかりしているし、フルートは重厚だし、ファゴットは表情豊かだし、クラリネットは滋味あふれているし、トランペットは輝かしいし、ホルンには哀愁が漂っている。チャイコフスキーもまた、演出上手なのである。
それから、弦楽器群。艶やかな高音からたっぷりと厚い低音までムラなくよく鳴っている。ピチカートはガッツリ太い。男前。
ティンパニのうまさにも触れる必要があるだろう。おそらく、オーマンディの解釈で通常の楽譜にははいっていない箇所にもティンパニを打ちこませていると思われるが、なかなか効果的。金管楽器と溶け合うところはもちろん、弦楽器ともよく混ざり合っており、いい音を出している。
2楽章では、弦楽器にわずかなポルタメントをかけており、少し古めかしい感じがして面白い。現代的なオーケストラの響きとの対照がユニークなのである。そのあたり、オーマンディは19世紀生まれの人なのだということを改めて思う。
このBOX、まだこの1枚しか聴いていないが、これを含めた交響曲の全曲と協奏曲の全曲、三大バレエ音楽のハイライトなどの管弦楽曲が12枚にぎっしりつまっている。HMVだと3000円しないで買うことができる。
死ぬほど安いといっても過言ではなかろう。
1976年の録音。
おでんとツイッター始めました!ワイルドフラワーの絨毯。
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