チャイコフスキー「フランチェスカ・ダ・リミニ ドゥダメル指揮 シモン・ボリバル・ユース管弦楽団小谷野敦の「俺も女を泣かせてみたい」を読む。
これはエッセイ集であるが、なかで腑に落ちたのは「『おはようございます』の理由」。
芸能界では朝であろうが夜であろうが「おはようございます」とあいさつする。これは何故かを考察(っていうほど大げさではないが)したもの。
目上の人に「おはようございます」と言えば「おはよう」と帰ってくる。
ところが、「こんにちは」とあいさつをすれば「こんにちは」と帰ってくる。
これでは、序列の厳しい芸能界では、いささか具合が悪い。だから「おはようございます」なのだと。
なるほど。理にかなっている気はする。
ドゥダメルの指揮でチャイコフスキー「フランチェスカ・ダ・リミニ」を聴く。
今更であるが、シモン・ボリバル・ユース・オーケストラはれっきとしたプロのオケである。「ユース」と名がつくからメンバーは20代と若いのであるが、国立のプロ・オーケストラなのである。
シモン・ボリバルとは、ベネズエラ独立の英雄の名前であり、南米ではよく知られた人物であり、この英雄の勢いと、ベネズエラの国民的英雄になろうという意義が、団体名に込められているとのこと。
ベネズエラが強いのは野球だけじゃなかった。
三部形式からなるこの曲、急・緩・急といった流れになっている。「急」の場面では激しいが、細かなニュアンスづけが丁寧であり、うるさくならない。抑揚に富んでいて、劇的だ。弦は泡立ち軋みを立て、チューバの響きはキラキラ光る。
「緩」は、フランチェスカとパオロとの出会いのシーン。厚めのフルートからクラリネットを経て、ヴァイオリンの甘い旋律がこれでもかと響きわたる。曲そのものが臆面ないから、この演奏もそうなっているわけだが、もちろん嫌いではない。
全体を通して、丁寧な演奏。ライヴであるが、繰り返し聴くに耐える。
2008年1月、ベネズエラ、カラカスでの録音。
パース、スワン河に浮かぶ「月の道」。
不思議だな。
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