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小澤のチャイコフスキー交響曲第4番

2006.09.29 - チャイコフスキー
小澤

小澤指揮ベルリン・フィル/チャイコフスキー交響曲第4番

平日に音楽を聴くとき、何を聴きたいかというと、私の場合、多忙だったときは静かな曲、ヒマだったときは賑やかな曲を聴く、ということが多い。
クール・ダウンを求めているのである。
ここ何日かはわりにヒマなので、本日は賑やか、というか騒がしいチャイコの第4とイタリア奇想曲を聴いた。


小澤征爾の音楽はおとなしい。東洋的な謙虚な心が、馬の目を射るような西洋音楽に溶け込めていないからであろうか。
ボストン饗と残した少なくない録音を聴くと、私はどちらかというと渋さを感じる。サイトウ・キネンなどとのライヴ録音では熱狂的な盛り上がりを見せるけれども、スタジオ録音では同じ世代の指揮者以上に、こじんまりとまとまった演奏が多いように感じる。悪くはないのだが、パンチに欠けるものがあるような。
ここに、小澤のレコードが売れない理由があるのではないか。
「これは小澤でなければならない」という曲が、いまのところないしネ。
ここらあたりで、1発大ホームランを期待したいところではある。
ただ、彼のスタジオ録音に価値がないかといえばそんなことはなくて、木目の細やかな音の紡ぎ方は彼独自の世界であって、それはそれで魅力ではある。地味ではあるが。

このチャイコフスキーは、第4とイタリア奇想曲がカップリングされていて、かつベルリン・フィルが出演しているので手に入れた。うるさい音楽と、やかましいオケと、繊細な指揮者のコラボである。
ベルリン・フィルは、黙っていたらどこまで踏み外すかわからないじゃじゃ馬なオケであるが、小澤はその首根っこをなんとか抑えこんで、バランスのよいまとまりを築きあげている。
あからさまな熱狂とかロシア臭には欠けるし、ムラヴィンスキーやショルティのような突出した魔力を求めることはできないが、デリカシーのある音響世界が繰り広げられており、安定した味わいのあるチャイコフスキーを聴くことができる。
「イタリア奇想曲」は、まったくもって騒がしい曲であるが、色鮮やかなメロディーの応酬が楽しい。いわゆる通俗名曲の典型的な音楽ともいえようが、チャイコ独特のしつこいコーダがたまらない。
今もってあまり話題にならないCDであるが、演奏にアクがなく、安心して聴くことができる。
アクがないので話題にならないとも言える。




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Comment

無題 - しじみ

こんばんは。
小澤征爾の魅力はやっぱりライブなんだと思います。オペラを観ればよく分かるのですけど、オケ、出演者、観客を巻き込んだアットホームな舞台づくり、これこそ彼の力が最大限生きるんだと確信しています。だから録音がこじんまりしているのも頷けます。観客が欠けていますからね。
でも、そのチャイコの4番は興味深いですねー。大好きなんですよ、4番。特にあの第4楽章の恐るべきスピードと派手さ。小澤征爾のまとめっぷりが気になりますねー
2006.09.29 Fri 23:04 URL [ Edit ]

Re:しじみさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

小澤は、80年頃から、なんかオペラ始めたなーと思っていたら、いつのまにかウイーンの音楽監督になっていた、という感じです。私は彼のオペラを生では聴いてないのですが、いいですかー。
チャイコの4番はもう3回も録音しているようです。パリ管とBPOとサイトウ・キネン。前の2つは聴きましたが、どちらも滋味のあるいい演奏です。彼のチャイコフスキーは安定感が抜群です。
2006.09.29 23:14

無題 - mozart1889

小沢のチャイコフスキーは、自然体でドロドロしていないのがイイですね。ステーキの脂っこさではなく、江戸前の寿司のシャキッとした味わい。交響曲も管弦楽曲も、小沢の演奏で聴くと、スカッとします。リズム感が抜群なのも小沢のチャイコフスキーのいいところだと思いました。
2006.09.30 Sat 08:56 URL [ Edit ]

Re:mozart1889さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

「江戸前の寿司のシャキッとした味わい」なるほど同感です。彼の残した後期の3つはいずれもそうですね。1番や2番も聴いてみたい演奏なので、サイトウ・キネンかウイーンでチャイコフスキーの全集を作ってもらいたいところです。
2006.09.30 09:45

無題 - yokochan

このCDは私も聴きましたが、一度だけです。スイスイ・スラスラと流れ行く演奏に「上善水の如し」を感じます。もう少しアクがあるといいんでしょうが。
若き武者時代からすると、こじんまりし過ぎに思ってしまいます。ライブで燃えて純米酒くらいのコクと熱気を取り戻して欲しい気もします。
2006.10.01 Sun 15:40 URL [ Edit ]

Re:yokochanさん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

ここ十数年の小澤の音楽は、確かに「こじんまりし過ぎ」ですね。スタジオ録音には熱気がいまひとつ。CDは全てライブで録音してほしい気もします。
オーケストラの響かせ方のブレンダー(?)としての手腕は一級品なので、あとはこれに何かが加われば最高なのでしょうけれど…。今後、どうなるのか期待です。
2006.10.01 17:03

無題 - ruiros2019

シカゴ響とのシェェラザード、パリ管とのチャイコフスキー4番、サンフランシスコ響とのロメオ&ジュリエット三葉につきる。
マゼール、メータ、アバドも同じなんだが1974年から1975年をさかいに以後完全に駄目になってしまった棒振りの一人でしょう。
辛口評論家達の雑音に惑わされず、もしかしてと思いボストン響との復活やベルリオーズとのレクイエム、ベルリンフィルとのカルミナブラーナを祈るような気持ちで耳を傾けたが、もうどうしようもないですね。
彼は過去の人として認識しています。
1970年録音のパリ管とのチャイコフスキー第4番が彼の全盛期の最初で最期の記録だったと考えています。
2007.07.31 Tue 13:17 [ Edit ]

Re:ruiros2019さん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。
この3つの中で聴いたことがあるのはチャイコフスキーだけなのですが、これはLPで何度も聴きました。確かに素晴らしい演奏で、ここにあげたBPOとのものより活気にあふれたものと思います。あと、パリ管との「火の鳥」もいい出来でした。
小澤で印象的だったのは、BSOとの初来日時の「幻想交響曲」です。テレビで観ただけですが、同じオケとのスタジオ録音とは比較にならないほどいいものだったと記憶します。
BPOとの「カルミナ・ブラーナ」はライヴなので期待したのですが、ダメでしたね。
彼の新譜は買う気しないのですが、今後どうなるか、ちょっぴり期待はしているのですが…。
2007.08.01 20:16
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