小澤指揮ベルリン・フィル/チャイコフスキー交響曲第4番平日に音楽を聴くとき、何を聴きたいかというと、私の場合、多忙だったときは静かな曲、ヒマだったときは賑やかな曲を聴く、ということが多い。
クール・ダウンを求めているのである。
ここ何日かはわりにヒマなので、本日は賑やか、というか騒がしいチャイコの第4とイタリア奇想曲を聴いた。
小澤征爾の音楽はおとなしい。東洋的な謙虚な心が、馬の目を射るような西洋音楽に溶け込めていないからであろうか。
ボストン饗と残した少なくない録音を聴くと、私はどちらかというと渋さを感じる。サイトウ・キネンなどとのライヴ録音では熱狂的な盛り上がりを見せるけれども、スタジオ録音では同じ世代の指揮者以上に、こじんまりとまとまった演奏が多いように感じる。悪くはないのだが、パンチに欠けるものがあるような。
ここに、小澤のレコードが売れない理由があるのではないか。
「これは小澤でなければならない」という曲が、いまのところないしネ。
ここらあたりで、1発大ホームランを期待したいところではある。
ただ、彼のスタジオ録音に価値がないかといえばそんなことはなくて、木目の細やかな音の紡ぎ方は彼独自の世界であって、それはそれで魅力ではある。地味ではあるが。
このチャイコフスキーは、第4とイタリア奇想曲がカップリングされていて、かつベルリン・フィルが出演しているので手に入れた。うるさい音楽と、やかましいオケと、繊細な指揮者のコラボである。
ベルリン・フィルは、黙っていたらどこまで踏み外すかわからないじゃじゃ馬なオケであるが、小澤はその首根っこをなんとか抑えこんで、バランスのよいまとまりを築きあげている。
あからさまな熱狂とかロシア臭には欠けるし、ムラヴィンスキーやショルティのような突出した魔力を求めることはできないが、デリカシーのある音響世界が繰り広げられており、安定した味わいのあるチャイコフスキーを聴くことができる。
「イタリア奇想曲」は、まったくもって騒がしい曲であるが、色鮮やかなメロディーの応酬が楽しい。いわゆる通俗名曲の典型的な音楽ともいえようが、チャイコ独特のしつこいコーダがたまらない。
今もってあまり話題にならないCDであるが、演奏にアクがなく、安心して聴くことができる。
アクがないので話題にならないとも言える。★音楽blogランキング!★にほんブログ村 クラシックブログ無料メルマガ『究極の娯楽 -古典音楽の毒と薬-』 読者登録フォーム
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小澤は、80年頃から、なんかオペラ始めたなーと思っていたら、いつのまにかウイーンの音楽監督になっていた、という感じです。私は彼のオペラを生では聴いてないのですが、いいですかー。
チャイコの4番はもう3回も録音しているようです。パリ管とBPOとサイトウ・キネン。前の2つは聴きましたが、どちらも滋味のあるいい演奏です。彼のチャイコフスキーは安定感が抜群です。
「江戸前の寿司のシャキッとした味わい」なるほど同感です。彼の残した後期の3つはいずれもそうですね。1番や2番も聴いてみたい演奏なので、サイトウ・キネンかウイーンでチャイコフスキーの全集を作ってもらいたいところです。