マイケル・ティルソン・トーマス指揮ロンドン交響楽団の演奏で、チャイコフスキーの「白鳥の湖」全曲を聴く(1990年5月の録音)。
これは、豪奢で技巧的にも洗練された名演奏。
ロンドンは、バレエの都市でもある。英国ロイヤル・バレエは、規模・実力ともにボリショイ・バレエに並ぶとされている。それと関連すると思われるが、ロンドンのいわゆる5大オーケストラは、バレエを専門としているわけではないものの、いくつもの名盤を生み出している。
3大バレエの全曲を録音しているところだけで、フィルハーモニア管弦楽団(ランチベリー指揮)、ナショナル・フィル(これはロンドンの混成オーケストラだが。ボニング指揮)、ロンドン交響楽団(プレヴィン指揮)を思い出すことができる。3大バレエの全曲録音そのものが比較的少ないため、これはけっこうな数と言える。
(因みに、アメリカのオーケストラが、ひとりの指揮者で3大バレエ全曲をやっているところは、セントルイス交響楽団(スラトキン指揮)しか知らない。他にあるだろうか?)
当時ロンドン交響楽団の首席指揮者であったティルソン・トーマスはチャイコフスキーをわりと得意としている。他に3大バレエは、フィルハーモニア管弦楽団と「くるみ割り人形」を録音しているが、「眠りの森の美女」は検索しても見当たらないので、録音がないのかもしれない。
さてこの演奏、オーケストラがとても好調。アンサンブルは整然としており、響きは華やか、そして覇気が漲っている。そこは、指揮者がうまくリードしたに違いない。
テンポは全体的に中庸かやや速め、繊細でスッキリとした味わいのなかに、淡い情感が立ち昇る。
ここぞというときは、金管楽器と打楽器が炸裂、マッシヴな迫力もじゅうぶんにある。
演奏時間は148分強。チャイコフスキーの幻想世界を存分に堪能。
図書館。
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