ジュリアード弦楽四重奏団の演奏で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲12番を聴く(1982年、ワシントン、アメリカ合衆国国会図書館クーリッジ・ホールでのライヴ録音)。
これは、剛直で押しが強い演奏。ホールの響きがデッドなことも、骨太のスタイルに拍車をかけている感じ。
この四重奏団が設立されたのは1946年。メンバーを変えながら、今も続いているし、今年の春には東京公演も行われた。
当録音は、初代の第1ヴァイオリンを勤めたロバート・マンが出演しており、存在感を示している。
ただ、録音当時は高齢に加えてライヴだからか、1楽章の最初のほうのトリルが怪しいなど、技巧的には完全とは言えない。ただその後は立ち直って、引き締まったアンサンブルを構築する。
15分かかる長大な2楽章アダージョがこの作品の大きな聴きどころのひとつである。形式は変奏曲、ひとつひとつの変奏は長く、深い。演奏は、冬の青空のように澄み切っている。
軽快なピチカートから始まるスケルツォ、この演奏では終楽章よりも長い。ジュリアードの演奏はとても強く、緻密。
ヒロイックな終楽章も、彼らのスタイルは明快で力強い。ジンセイの様々な試練を乗り越えて、ほとんど成仏の域に達した晩年のベートーヴェンのイメージを損なうことなく、硬派な味わいを醸し出している。
ロバート・マン(第1ヴァイオリン)
アール・カーリス(第2ヴァイオリン)
サミュエル・ローズ(ヴィオラ)
ジョエル・クロスニック(チェロ)
図書館。
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