モーリス・ジャンドロンのチェロ、アンセルメ指揮スイス・ロマンド管弦楽団の演奏で、チャイコフスキーの「ロココの主題による変奏曲」を再び聴きました(1953年11月、ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホールでの録音)。
このCDはアンセルメの「白鳥の湖」を聴きたくて手に入れたものです。失礼ながら、たまたまジャンドロンがついてきた、といった感じ。でも、これは当たりというか珠玉の演奏であります。このディスクを初めて聴いたのは、10年近く前のことで、それ以来ジャンドロンに着目しています。
チャイコフスキーが生涯憧れつづけた西欧の、なかでもとりわけモーツァルトへの畏敬の念がもっとも強くあらわれている音楽が、このロココ変奏曲だと思います。ジャンドロンは、モーツァルトの高貴な味わいを滲ませながら、淡い哀感をも匂い立たせています。緩急おりまぜたテクニックは軽やかで、自然にわき出るような細かなニュアンスがいい。
チェロという楽器は、カザルスの無伴奏など古い録音でも聴くに耐えうるものが多いですが、これもじゅうぶん。マイクが近いのか、チェロの音がとても生々しい。松脂のざらついた触感がリアルに伝わってきます。
スイス・ロマンドは、とくに木管楽器がキリッとしていて気持ちがいい。
パースのビッグムーン。
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