ストラヴィンスキー組曲「火の鳥」ブーレーズ指揮BBC交響楽団適菜収の「いたこニーチェ」を読む。
サイン本である。本屋の新刊コーナーに、サインのあるものと普通のものとが積んであった。著者を知らないくせに、ないよりはあったほうがよいだろうということで選んでみるのは、貧乏性のなせるわざ。
もっとも、第三の新人以降の作家のサインは、貴重どころか落書き扱いになる、ということをどこかで読んだことがある。これも落書きになってしまうのだろうか。
せっかくなので大成してもらいたいナ。
主人公は25歳のサラリーマン。彼の友人にニーチェが降臨し、カントの生まれ変わりである主人公にニーチェの思想を教え込んで更生させるという話。
プラトン、パウロ、カントの流れは負のスパイラルであり、世界に未曾有の危機をもたらしている元凶とのこと。そこで、世界を救うためにニーチェが現れるのだった。
カントの思想は駄目でニーチェが正しいというあたり、勧善偽悪なところはどうかと思うが、ニーチェの考え方がわかりやすく記されていて、実にカンタンに読むことができる。
1時間でニーチェがわかってしまう。ホントウか?
ブーレーズの「火の鳥」は1911年版の組曲。
3度録音しているうちの、最初のもの。
ブーレーズは60年代後半から70年代前半にかけての頃が旬だと思う。だいたいニューヨーク・フィル在任の時期と重なる。プログラムに現代曲ばかり取り上げるので地元での人気はなかったらしいが、今思うと刺激的で贅沢な時代であった。いや、喉もと過ぎればなんとかか。
当時の反響をリアルでは知らないが、CBSに残された録音は良いものが多い。読売巨人軍、じゃなかったドイツ・グラモフォンに移ってからの落ち着き払ったものとは気合が違う。
この「火の鳥」もいい。
ipodに入れたものを、今週は毎日聴いていたが全然飽きない。あと1週間はもつだろう。
何が良いかとひとことで言えば、冴え渡る木管楽器の響きがいい。いきいきとした音があたかも空中を乱舞するかのような華やかさ。これは快楽である。
選んだ4曲はさながらシンフォニー。とはいえ、全曲でないことはやはり惜しい。
1967年の録音。
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