ストコフスキー指揮 器楽アンサンブル養老孟司と太田光の「人生の疑問に答えます」を読む。
養老の明晰で論理的な分析と太田の少々乱暴な意見との対比が面白いが、付箋を張り付けて読み返したくなるのは養老のほうだ。
本の中で「キレやすい子供」と「老人介護」の問題を扱っている。養老説によれば、どちらも同じ原因を抱えている、というように読み取ることができる。
それは石油である。
今の子供たちは昔に比べると楽をしている。冷暖房完備で、病気になったら大変ということで後生大事に育てている。
その一方で、老人は退職した後も働きたい人が多い。なのに働く目をつぶしているのは、「人間社会の秩序を維持するために」大量の石油を使っているから。なので、老後にあえて働かなくても石油のおかげで、人々は安心して生活をすることができる、と。
明快すぎるくらい明快である。
ストラヴィンスキーが「兵士の物語」を書いたのは、1918年のこと。あの三大バレエはすでに書き終えており、「うぐいすの歌」や「結婚」もすでに世に生まれている。ときに36歳。業績を考えたら、もう隠居してもいいぐらいの仕事をしているように思えるが、まだまだ彼は新しい音楽に挑戦していた。
兵士の物語は「結婚」と同じスイスのラミューズの台本に拠る。兵士が悪魔との取り引きを重ねて、最後は破滅するという話。
「人間は持っている以上のものを望んではならない」、といった教訓つきのお話しである。オリジナルは「語り手」、「兵士」、「悪魔」の三人の語り手が登場するが、このCDに収録されているのは、作曲家が自ら編曲した管弦楽のための組曲版である。といっても、弦三、木管三、金管三、打一の七人の奏者によって演奏される。
ひらたく言えば七重奏曲だから、これに指揮者が必要なのかはよくわからない。
録音は残響が少なめなので、それぞれの楽器がリアルに聴きとることができる。こういう録音だと、ほんのちょっとの瑕疵があきらかになってしまうので奏者はいやなものだろう。でも、ここでの奏者はみんなうまい。清冽にして芳醇。
1967年、ニューヨーク、ヴァンガード・ 23丁目スタジオでの録音。
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