ポリーニのピアノで、ショパンのポロネーズ集を聴きました(1975年11月、ウイーンでの録音)。
ポリーニは私にとって、かつてのヒーローでした。目覚ましいテクニックに酔ったのです。それはショパンの練習曲であったり、ペトルーシカであったり、バルトークのコンチェルトであったり。あと、1986年に東京でやった「熱情」はすごかった。FMで音楽を聴いて、あんなに興奮したことは、数えるくらいしかないかもしれない。
彼のキャリアの絶頂期は、70年代から80年代だという仮説を立てています。技巧が頂点に達していた時期です。2000年以降もときおりいい演奏を聴かせてくれますが、それは専らライヴだと思う。
2度、彼の生演奏に触れました。最初のものは90年代初頭だったか、シュトックハウゼンとシェーンベルク、ブラームス、そして「ハンマークラヴィーア」を並べた演目でした。あれは、ほんとうに掛け値なしに、一生心に残るであろう演奏でした。いま思い出しても、震えます。あの体験があったから、まだポリーニを聴く気になっている。
だから、彼のレコード・アーティストとしての「ポロネーズ」は、今となってはかけがいのないディスクだと思います。
音色はちょっと硬いのだけど、テクニックは万全、それが彼の持ち味。
コルトーやフランソワは最高だけれど、ポリーニのショパンも、いいじゃない。
ポロネーズで好きなのは、5番と7番。
荒削りだけどポロネーズのリズムが豊かな5番。いくぶんトリッキーな動きに、当然すんなり対応している。テクニカルな部分は万全。難しいと感じさせない。
7番は「幻想」。先日に友達の演奏を聴いて、好きになりました。
ポリーニの演奏は、強弱の按配がとてもデリケート、とりわけピアニシモがきれい。丁寧に弾いています。後半は若干、生硬なところがあるものの、全曲を通してやっぱり技巧の高さで押し通している。これはこれで、ひとつの見識だと思います。
パースのビッグムーン。
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