ヴィルヘルム・ケンプのピアノで、シューマンの「森の情景」を聴きました(1973年2月、ハノーファ、ベートーヴェン・ザールでの録音)。
この曲を初めて聴いたのは中学生のとき、図書館で借りたルービンシュタインのLPによりました。知っていた「子供の情景」と似た風合い、でも少しひんやりとした感触。このときはまだ、「予言の鳥」の神秘的な魅力をわからなかった。
ケンプの演奏は、リズム感がよくて、おおらかなもの。朧月のように、いくぶんくすんでもいる。それがくだんの「予言の鳥」になると、雲が晴れたように月が光彩を放ちます。怜悧で、かつ幻想的な夜の世界が広がり、いっとき浮世を忘れました。
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