井上道義指揮、読売日本交響楽団・他の演奏による、マーラーの交響曲第8番『千人の交響曲』公演に足を運びました(2018年10月3日、東京芸術劇場大ホールにて)。
オーケストラは第1ヴァイオリンが6プルト、コントラバスが8名と、この曲にしてはさほど大きな編成ではありませんでした。3年ほど前に聴いたハーディングのときより少し小ぶり。
でも、たくさんの音が出ていた。ときには大合唱をかき消すくらいに。
ただ、第1部においては、音量の均衡がとれていない箇所が散見されました。合唱が強かったり、オーケストラが響きすぎて独唱が聴こえづらかったり。総じてソリストのエンジンがかかっていないようにも見受けられた。
転じて、第2部は聴き応えじゅうぶん。
オーケストラは精妙であり力強く、不満なし。とくに、ヴァイオリン、フルート、トランペット、ハープ、マンドリンがいい味を出していたように思います。
ソリストではまず、青戸さんの法悦の教父。艶めかしい声は濃厚だけれどナイーブで、たっぷりとしたロマンティシズムがホールを満たし、身悶えするようなパフォーマンスと相まって、大きな存在感がありました。この曲のCDは少なからず聴いてきましたが、こんなに起伏のある歌は初めて。このコンサートで最も印象的。感銘を受けました。
それから、池田さんのサマリアの女は貫禄たっぷり。音程は確かだし、抑揚も自然。深い藍色の声が、しっとりと空気を染めていくのがわかりました。
森さんの栄光の聖母は清澄。あまりの清らかさに頭を垂れたくなりました。
合唱は柔らかくてふくよか。とりわけ第2部での弱い音は、精緻で神秘的に感じられた。少年合唱は瑞々しくて言うことなし。くるみ割り人形にしてもこの曲にしても、子供の合唱はどうしてこんなに心に響くのだろう。
栄光の聖母以降、寄せては返す音の波に、涙を抑えることは困難でした。
井上さんの指揮は奏者がやりにくそうだったけど、カッコよかったな。
終演後、合唱団員の廣瀬さんとピアニストの河野さんにお会いしました。
ソプラノⅠ(いと罪深き女):菅英三子
ソプラノⅡ(贖罪の女):小川里美
ソプラノⅢ(栄光の聖母):森麻季
アルトⅠ(サマリアの女):池田香織
アルトⅡ(エジプトのマリア):福原寿美枝
テノール(マリア崇拝の博士):フセヴォロド・グリフノフ
バリトン(法悦の教父):青戸知
バス(瞑想する教父):スティーヴン・リチャードソン
首都圏音楽大学合同コーラス
東響コーラス
TOKYO FM 少年合唱団
合唱指揮:福島章恭
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