アンナー・ビルスマと仲間たちによる、シューベルト弦楽五重奏曲を聴きました(1990年11月、ニューヨークでの録音)。
これは、世にも崇高な音楽。
バッハの『マタイ』、モーツァルト『フィガロ』、ベートーヴェン『後期弦楽四重奏群』。あるいは、『マイスタージンガー』。確かに、偉大。
でも、このシューベルトには水が滴るようなセンチメントがあるのです。そこは、チャイコフスキーに通じているかな。
ヴェラ・ベス(ヴァイオリン)
リサ・ラヴテンバーグ(ヴァイオリン)
スティーヴン・ダン(ヴィオラ)
アンナー・ビルスマ(チェロ)
ケネス・スロウィック(チェロ)
例えば、マタイは演奏を選ばないところがあるけれど、この曲は下手な弾き手にかかるとボンヤリするところがある。その点、この演奏はたいへん引き締まっており、最後まで緊張感を途切らせない。
テンポの変化は適度にあるものの、流れがいたって自然であり、浮き立つように楽しい。こんな音楽を奏でられたら、どんなに愉快だろうと思う。
浮世を忘れさせてくれるものが芸術だと考えます。
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