ジュリーニ指揮バイエルン放送交響楽団の演奏で、シューベルトの交響曲4番を聴く。
(1993年2月、ミュンヘン、ヘラクレス・ザールでの録音)。
「ウォルター・レッグは、多くの音楽家の性格的な特徴について、ゴシップ記事にでもなりそうな口調で話した。その際に、無傷の状態で話題に上ってきた唯一の人物が、カルロ・マリア・ジュリーニであった。『彼は聖者なんだよ』とレッグは言った」(ロバート・チェスターマン)
これはジュリーニが2度目に行ったセッション録音。最初のはシカゴ交響楽団とのもので、ひややかな手触りがしつつもたっぷりと厚い演奏だった。
このバイエルンとの演奏を聴くと、やはりオーケストラの違いを如実に感じないわけにいかない。
テンポは中庸よりいくぶん遅め。低弦を中心に、こってりとして柔らかい響きが終始音楽を支配している。1楽章の第1主題は、なにかに追い立てられるような焦りの旋律であるけれど、あたかもオリンポスのように格調高く、信じられないくらいの透明感がある。
2楽章アンダンテは可憐にして意志が強い。青い炎のように穏やかな熱狂。
3楽章はチェロ、コントラバスが強い。全体が重い雲に覆われているよう。一筋の光はファゴット。
4楽章の最初の旋律は、1楽章を想起させる。これで、全曲のバランスが強固になっている。
ヴァイオリンと木管楽器との掛け合いは可愛らしく大きな聴きどころであるが、こんなに雄大な演奏はそう多くないだろう。
春。
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