村上春樹の「女のいない男たち」を読む。
これは、6つの作品からなる短編集。
「ドライブ・マイ・カー」は、主人公である舞台俳優が、今は亡き妻と寝たと思われる男と親交を深める話。
相手は「正直だが奥行きに欠ける。弱みを抱え、俳優としても二流だった」男としているが、主人公がそんなに偉い人間とはどうにも思えない。
「イエスタデイ」は、芦屋出身で早稲田大学に通う主人公と、生まれも育ちも田園調布なのに完璧な関西弁をしゃべる浪人生との交友を描いた作品。
要領のいい知ったかぶりの芦屋よりも、まったく合理的ではない田園調布のほうが人間として魅力がある。本書のなかでは一番面白かった。
「独立器官」は、裕福で女遊びに長けた整形外科が、本物の恋に落ちる話。
昔に読んだ短編に、似たようなものがあった。人間の喪失の物語。
「シェエラザード」は、寝物語が異常に面白い女の話。最後いいところで終わってしまうのが残念。
「木野」はバーテンダー。後半はオカルトめいていて、オチがない。
「女のいない男たち」は、なんだかよくわからない。読んでいる最中、2回寝てしまった。
短編には短編を。フルネが指揮をするフランス序曲集。
ボイエルデュー 歌劇「白衣の婦人」序曲
ベルリオーズ 序曲「ローマの謝肉祭」
グノー 歌劇「ミレイユ」序曲
マスネ 序曲「フェードル」
ラロ 歌劇「イスの王様」序曲
デュカ 序曲「ポリュークト」
ピエルネ 劇音楽「ラムンチョ」序曲
ボイエルデューは、1775年に生まれたフランスの作曲家。このオペラは、初演から30年余りで1000回も公演が行われたとのこと。
折り目正しい古典の様式から、瀟洒な雰囲気を醸し出している。
ベルリオーズは、小回りがよく利いた、切れ味の鋭い演奏。かなりレベルが高い。
グノーは優美にして牧歌的。1864年にパリで初演された純愛オペラ。まあなんというか、それなりの音楽というか。
「フェードル」は、マスネがオペラ作曲家としての地位を固める前の作とされており、1874年に管弦楽曲として初演されている。
甘いメロディーが執拗に繰り返されるところがチャイコフスキーのバレエ音楽に似ている。
ラロの「イスの王様」は1888年にパリで初演された。気だるくて長い序奏から華麗な主部へ至るところ、なかなか緊張感がある。弦楽器を主体に豪奢なオーケストレーションが展開される。
そのあたり、チャイコフスキーの影響ありとみた。
「ポリュークト」はデュカの初期の作品で、1892年に初演されている。15分余りを要する大曲。
彼は70年の生涯のうちに7曲しか作品を残さなかったが、これは厳しい自己審査をくぐり抜けたなかの1曲。フランクの交響詩に、スプーン一杯の仄めかしを加えたような味わい。
「ラムンチョ」は、1908年にパリで初演された舞台付随音楽の一部。
いかにもラムンチョといった感じの音楽。
ピエルネというと、ロックバンドを組んでいた大学時代の友人が好んでいたが、なぜあえてピエルネなのか、今もって不明である。
全曲を通してフルネとオランダ放送フィルは快調。
このオケは、フランス物をやると、コンセルトヘボウよりもよいように思う。
1996年9月、ヒルヴァーサム・ミュージック・センターでの録音。
ガソリン・スタンド。
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