マルクス・アウレーリウスの言葉は正論だが、それだけに厳しい、日曜日の夜に読んだらキツいと以前に書いた。が、明日は休みなので、いささか気を抜いて読める。
「生まれつき耐えられぬようなことはだれにも起こらない。同じことがほかの人にも起こるが、それが起こったことを知らぬためか、もしくは自分の度量の大きいことをひけらかすためか、ともかくも彼は泰然として立ち、傷つきもしないでいる。無知と自負のほうが知恵よりも力強いとはまったく不思議なことだ」(第5巻18)。
リン・ハレルのチェロ、マゼール指揮クリーヴランド管弦楽団の演奏で、エルガーのチェロ協奏曲を聴く。
このディスクは、デッカの「マゼール・クリーヴランド・イヤーズ」の最終巻。こういう演奏もあったのだなと感慨に耽る。
エルガーのこの曲は、デュ・プレによる、激しい情念を前面に打ち出した演奏がことのほか有名。演奏は立派だということに異存はない。ただ、その時の気分によって、感動することもあれば、暑苦しく感じることもある。なので、あんまり取り出さない。
それに対し、このハレルの演奏は、折り目正しく清々しい。曲そのものの重さをできるだけ軽減し、楽譜に書いてあることを端的に記述したようなチェロとオーケストラ。
ハレルのチェロは、とても明朗であり、音程もテンポも安定している。技術的にこれ以上望むものはないくらいである。音色には適度な質量と潤いがあって聴きやすい。
マゼールの指揮は、縦の線をキッチリ合わせたもので、とても筋肉質。1970年代のクリーヴランド管弦楽団らしい、体脂肪のとても低い響きを放っている。こういうスタイルだとおそらく、ソロに合わせるのがより困難だと察するが、そんな杞憂はムダだった。ハレルの清廉なチェロにぴったりと寄り添ったサポートになっている。
この曲を普段聴くならば、デュ・プレよりもこちらをとりたい。
1979年10月、クリーヴランド、メイソニック・オーディトリアムでの録音。
休憩。
重版できました。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR