マゼール指揮バイエルン放送交響楽団の演奏で、R・シュトラウスの「アルプス交響曲」を聴く(1998年3月、ミュンヘン、ヘラクレス・ザールでの録音)。
この曲は、作曲者が14歳だったころに経験した登山からインスピレーションを得て作曲したといわれ、1915年に完成している。曲は単一楽章からなっていることから、交響曲というよりは交響詩としたほうが通りがいいような気がするが、どうだろう。
マゼールの指揮は、ケレン味が少ない。一か所を除いては、オーソドックスというか正攻法。曲そのものがケレン味満載なだけに、そうしたのかもしれない。
全体を通して、いい意味での緊張感に溢れた演奏になっている。
バイエルン放送交響楽団は、当時彼が首席指揮者を務めていたところ。バランスのよさでは昔も今も随一、弦楽器から打楽器まで、どこを叩いても揺るがない建築物のように、しっかりしている。
道すがら森や小川、滝、花咲く野原、牧場などの風景が、丹念に描かれている。
この曲は乱暴に言ってしまうと、金管楽器がミスしなければ聴けてしまうけれども、「登山」のホルン、「氷河」や「頂上にて」におけるトランペット、トロンボーンは実に手堅く、危なげがない(「頂上にて」のトランペットは難易度が高いらしく、プレヴィン指揮フィラデルフィア管弦楽団盤は、セッション録音にも関わらずトランペットが落ちている)。
そして「嵐」。凄い。マゼールのいたずらっ気が爆発。ティンパニのこれでもかという強打、ブラスの割れんばかりの咆哮、そして、ウィンドマシーンに加えて「ゴゴゴゴ~ン」という雷鳴音が轟く!
ここのみは、ハメをはずしている。マゼールのしてやったりの顔が浮かぶよう。
このコンビによる一連のシュトラウスの録音のなかで、当録音は水際立っていると思う。
パースのビッグムーン。
PR