田崎悦子さんのピアノリサイタルに足を運びました(2022年6月5日、東京文化会館小ホール)。
シューベルト ピアノソナタ19番
ピアノソナタ20番
ピアノソナタ21番
演目はいわゆる後期三大ソナタ。遺作と云われています。
彼女のコンサート、ここ数年はベートーヴェンやブラームス、そして先月と今月のシューベルトについても晩年の作品を取り上げることが多いようです。ご自身の年齢を照らし合わせたときに、なにかしら感慨があるのかもしれません。
彼女はそれぞれ30分を超える曲を、すべて暗譜で弾きぬきました。似たようなフレーズの反復がある19番の4楽章や20番の1,4楽章、そして21番の1楽章において、わずかに立ち止まることがありました。でも、工夫して音符を紡ぎあげて元の道に合流、その後は何事もなかったかのように演奏しました。
楽譜を置いていればこうしたことはなかったかもしれない。昨年11月にやったブラームスでは楽譜を見ながら弾いていたはず。今回は、即興性や勢いを重視するために暗譜で弾くことを決めた。そう推測します。
そのアプローチが演奏にどんな作用をもたらしたのかは、わかりません。
19番における重厚で奥行きのあるまろやかな響き、それに対比するように20番の軽やかなさえずりは上等なご馳走。
そして3つに共通するのは、メロディの鳴らせかた。温かくて優しくて、たっぷりと抑揚がついている。シューベルトだなぁ、としみじみ感じました。
「死とひきかえに遺していった音符のひと粒ひと粒を、私も残りの1分1秒をもって感じ取り、生きた音楽に吹き返らせる努力をしたいと思う」(田崎悦子)
生きた音楽だったと思います。
田崎さんの投げキッスを受けとめに、また足を運ぼう。
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