シューベルト ピアノ・ソナタ第18番ト長調「幻想」
シューベルト(リスト編曲) 「アヴェ・マリア」
シューベルト(リスト編曲) 「きけきけヒバリ」
海老彰子(ピアノ)シューマンやアインシュタインが「完璧なソナタ」と評したとされるト長調のソナタは、下手なピアノで聴いたならば、退屈極まりない「地獄のソナタ」になる。
そういうリスクを避けるためには、疾走するがごとく弾き飛ばしてしまえば退屈な時間はより速く過ぎ去る。
そんなことを意識したわけではないだろうけど、海老のピアノはぐんぐんと速いテンポで弾き進められた。
退屈しているヒマはないどころか、その重量感にはいくぶん物足りなさを感じるくらいだった。
速いだけじゃなく、ところどころ装飾音を強調したり、音色を微妙に変えるなどの変化球をみせたりして、一筋縄ではいかない演奏とも言えた。
冒頭を含めて1楽章はすこしぼんやりした感触があって、最後までなじむことができなかったが、2、3楽章は良かった。もやもやとした若くて暗い情熱が爆発するようなテンションの高さを持続しながら、メロディーの愉快さ楽しさを満喫できるピアノだった。これらの曲は、シューベルトの40年近くあとのブラームスの登場を予感させるものがあった。
東京国際フォーラムの「G409」。変な名前の場所だと思ったら、普通の会議室である。
そこに会議用の椅子を並べると、150人くらいを収容することができる。
響きは良くなく、せっかくのスタインウェイの鳴りも篭ってしまって、よろしくない。
この狭い空間のメリットは、ソリストを近くで見られることだ。鼻息もバッチリ聞こえる臨場感がある。
ただ、段差のない平面な場所に椅子を並べているから、後方に座るとピアニストがまったく見えないのだった。
開演の10分前に到着したのだけど、ほぼ満席だったので、そういう席に座っていた。
2008年5月2日、東京国際フォーラム「G409」
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