シューベルト/ベリオ 「レンダリング」
シューベルト(レーガー編曲) 「糸を紡ぐグレートヒェン」
シューベルト(ウェーベルン編曲) 「君の姿」(「白鳥の歌」より)
シューベルト(レーガー編曲) 「君こそ我が憩い」
シューベルト(ウェーベルン編曲) 「道しるべ」(「冬の旅」より)
シューベルト(リスト編曲) 「若い尼僧」
シューベルト(レーガー編曲) 「音楽に寄す」
シューベルト(ブリテン編曲) 「ます」
シューベルト(レーガー編曲) 「魔王」
ジャン・フランソワ・エッセール指揮
ポワトゥ・シャラント管弦楽団
ナタリー・ゴードフロワ(ソプラノ)
トーマス・バウワー(バリトン)シューベルトのレンダリングをやるというので、この演奏会を楽しみにしていた。
舞台に並んだメンバーは、コントラバス3人、他の弦はそれぞれ3プルトの編成。
そういえば今までに聴いた演奏は、18世紀オーケストラ、モーツァルテウム管弦楽団と、いずれも室内オーケストラだったのだ。このくらいのサイズが、この曲の標準なのだろう。
冒頭の高らかな古典的メロディーはひきしまった硬質な響きであり、湿り気のないカラッとした明快さ。
明るく元気に進む古典的音楽に、やがてチェレスタが登場して暗雲が立ち込める。
そうそう、これがベリオだ。
19世紀初頭の牧歌的シンフォニーと、20世紀後期の精緻で混沌としたオーケストレーションとの融合は、不思議な味わいがある。
ポワトゥ・シャラント管弦楽団は、全体のバランスがよいのと、音に明るさがあるところが特長で、質の高さを感じた。ことにトロンボーン、オーボエは技量が高く、メジャーのオケにまったくひけをとらない。ホルンの独特の軽やかな音質はフランスならではというべきか。
途中に少しアンサンブルに乱れはあったものの、全体的に高いレベルの演奏だったと思う。
エッセールは指揮棒なしで、輪郭のはっきりした音楽をつくっていた。
後半はふたりの歌手とオーケストラの伴奏による歌曲。
「レンダリング」で爆睡していたヒトビトもおもむろに起き上がる。
ゴードフロワとバウワーが4曲ずつ交互に歌った。
ふたりともスリムで背が高く、1500席の大空間のすみずみまで響き渡る元気な声を聴かせた。
オーケストラの人数が絞られていたせいか、声がかき消されることなく聴こえるところがよい。
ゴードフロワは、ポップとシュターデを足して2で割ったような(??)美声の持ち主。声を聴くだけでいっときの幸せに浸ることができた。
容姿も目の保養になった(顔がはっきりわからないくらい席が遠かったので想像もはいっている…)。
バウワーも恰幅のよい声をもっていて、小回りはあまり効きそうにないかわりにたっぷりとしたメロディーの楽しさを味あわせてくれた。
オーケストラの伴奏による歌曲は、普段ピアノで聴くものとはだいぶ違う。
良くいえば華やか、悪くいえば饒舌。歌手とピアノのときは7:3くらいの比率なのが、オケだと5:5くらいになるような感じ。
音が多いので、それだけ歌に集中することが難しくなる。
2008年5月2日、東京国際フォーラム「Cホール」
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