河野真有美さんのピアノ、松岡幸太さんのテノール他の布陣による、ヴェルディ「トロヴァトーレ」ハイライト公演に足を運びました(2019年2月17日、原宿、ジャルダン・ド・ルセーヌにて)。
「トロヴァトーレ」はヴェルディの作品の中でも、非常に苛烈で劇的な音楽。このハイライト公演は時間的には全体の6割くらいをカバーしており、全曲に引けを取らない臨場感がありました。フランス料理に舌鼓をうったあとに、痺れるような刺激!
会場はレストランなので比較的響きはデッドなのですが、歌手陣はそれを熟知するに加えて、音量のバランスも絶妙だった。
私はこの曲で特に、3幕におけるマンリーコのアリアが好きなのですが、世にも勇壮なこの曲を松岡さんは軽々と歌っていた。あまりにも引っかかりがないのでドキドキ感が希薄だったとは贅沢な感想。
レオノーラは一途な乙女とのイメージがありますが、その印象を裏切ることのないノーブルな歌は私の心に刺さりました。
アズチェーナは魔女キャラ。昨年に豊島区民オペラを観たときに、歌手がものすごい化粧をしていて圧倒された記憶があります(歌もよかった)。この日はディナー・コンサートなのでそのようなパフォーマンスはありませんでしたが、ドスのきいた声はある種悪夢のようで、このオペラの懐の深さを感じないわけにいきませんでした。
伯爵は見た目も歌も貫禄たっぷり。深い声はどっしりと安定していて聴きごたえがあった。このルーナって人は、なんだか敵役には感じられないのですよね。
ピアノの河野さんはいつも通り堅実。歌手とのタイミングはあたかも空気のように自然に合っているので、そこに気を取られることはない。この日は初春の雨露のような装飾音の美しさと、全く濁らないフォルテッシモのマッシヴな力感に魅せられました。
充実した演奏に加え、ソリストたちを間近で聴くことのできるこのシリーズ、また足を運びたいものです。
レオノーラ:角野圭奈子
マンリーコ:松岡幸太
アズチェーナ:巖淵真理
ルーナ伯爵:金子亮平
ピアノ:河野真有美
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