東京二期会の制作による、黛敏郎「金閣寺」公演に足を運びました(2019年2月24日、東京文化会館大ホールにて)。
片山杜秀さんはかつて、このオペラを『普通のオペラのように「歌手対歌手」のドラマではない。軸になるのは「歌手対オーケストラ」』とあらわしました。なるほど、オケの響きはなかなか分厚く、存在感が大きい。
全体を通して感じたのは、ベルク8割、メシアン2割くらいのテイスト。新味は感じられませんでした。とはいえ、実直に物語に対峙して、陰鬱ともいえる劇的な効果を生み出すあたりは優れていて、2幕と3幕の終結部では背筋が痺れました。
歌手はまず鶴川を歌った加耒さん。あっけにとられるくらいに純粋な心情を持つが故に自殺する若者を演じましたが、恐ろしく伸びがあり透明感に満ちた声は、それにふさわしいものだったと思料。
柏木の樋口さんも同じくテノールで、これはやや屈折した役柄。それを切っ先鋭い歌声で舞台を引き締めていました。
溝口の宮本さんは、もうこの役を何度もこなしているから手慣れたもの。なんの引っかかりもなかった。溝口はこのオペラの主役ですが、出番は多いものの、意外と聴かせどころは少ないと感じました。
女を演じた嘉目さんは、なにしろ色っぽい。そしてとても意地悪なところがそそった。笑
指揮のパスカルさんは指揮棒なしで、大きなアクションでもってオーケストラと舞台を仕切っていました。
オケが優れていたかどうか、なにしろ初めてこの曲を聴いたのでなんとも云い難いものはあります。
演出は暗い舞台を基調。場面により小部屋を出したり引っこめたりしてメリハリをつけていました。また予想はしていましたが、金閣寺はプロジェクション・マッピングで登場。
これからのオペラに、PMは欠かせなくなったようです。
溝口:宮本益光
鶴川:加耒 徹
柏木:樋口達哉
父:星野 淳
母:腰越満美
道詮和尚:志村文彦
有為子:冨平安希子
若い男:高田正人
女:嘉目真木子
娼婦:郷家暁子
合唱:二期会合唱団
管弦楽:東京交響楽団
指揮:マキシム・パスカル
演出:宮本亜門
装置:ボリス・クドルチカ
衣裳:カスパー・グラーナー
照明:フェリーチェ・ロス
映像:バルテック・マシス
合唱指揮:大島義彰
舞台監督:村田健輔
公演監督:大島幾雄
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