河野智美さんのギター・リサイタルに行きました(2017年7月1日、銀座、王子ホールにて)。
彼女のギターを聴くのは2度目。ただ、最初は新年会の喧騒のなかで聴いたので、詳しいことは覚えていないのです。
それから2年近く、こうして本格的なリサイタルという形で聴くことができたのは、僥倖です。
【バッハ・リサイタル】
無伴奏ヴァイオリン・ソナタ3番
「ゴルトベルク変奏曲」からアリア
「シャコンヌ」
コラール「主よ、人の望みの喜びよ」
ブランデンブルク協奏曲6番から、2,3楽章
大沢美月、田中春彦(ギター)
アンコール:
「最愛の兄の旅立ちに寄せて」
「G線上のアリア」
ソナタ3番を聴いて、この人はなんと柔らかな音色を醸し出すのかと驚きました。ひとつひとつの音符を慎重に吟味し、そして慈しむように弾くのです。テンポが速くても遅くても、それは変わりません。ひとつの音の質量が、とても高い。
この曲においては、とくに2楽章が素晴らしかったと感じました。
「ゴルトベルク」は骨太の演奏。もちろん、音の優しさはあるのですが、一回り太い筆でグイっと描いた感じ。前の曲とのメリハリがありました。
休憩時間を挟んで2部の冒頭では、バロック・ギターによる演奏が披露されました。ご本人曰く、まだ初心者であるとのこと。現代のギターとは音も形も違うのですね。
「シャコンヌ」はまるでミケランジェロの「ピエタ」を思わせる演奏。穏やかな佇まいの裏で、赤い血が流れていました。涙がこぼれ落ちないように、聴きました。
慈しむようなコラールを経て、若手2人を加えたブランデンブルク。この曲をギターのアンサンブルで聴いたのは初めて。男声が通奏低音、もうひとりの女性が副声部、河野さんが主旋律を持ちました。
あらわれたものは、軽妙にして浮き立つようでありつつ、3つの楽器がいたって自然に柔らかくブレンドされた音楽でした。音色は極めて優しいし、リズム感もいい。原曲よりもむしろいいのじゃないかと言うのは言い過ぎかもしれませんが、それくらいよかった。
とても楽しい演奏会でした。
パースのビッグムーン。
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