北原幸男の指揮で、武蔵野音楽大学管弦楽団合唱団の演奏会を聴く。
ブラームス 運命の歌 Op.54
ベートーヴェン 交響曲 第9番 ニ短調 Op.125 「合唱付き」
なかなか重量感のあるプログラム。
運命の歌は、15分強の音楽であるが、落ち着いた佇まいのなかから、海の底から唸るような振動、うねりを感じさす音楽。
弦楽器の肌理の細かな旋律と、硬く引き締まった合唱との按配がなかなかよく、あまりひんぱんに聴いていない曲でありながらも楽しませてくれた。
休憩を挟んで、第九。
アマチュアのオーケストラは、ここ十年弱の間に、年に数回づつ聴いているので、おおまかなレヴェルは知っているつもり。おおくは社会人によるもの。仕事の合間に練習を重ねての披露には頭が下がる思い。ただやはり、音楽学生の一途な情熱とありあまる時間には敵わない。
このオーケストラのレヴェルの高さは、2楽章において如実にあらわれた。
ティンパニにリズムに乗ってファゴット、オーボエが奏するところは、実に見事。とりわけオーボエは、高い技術だけではなく、表情も豊かで素晴らしい。
アマチュアのオケは、ときどき木管や金管の名技にハッとするところはあるものの、総じて弦楽器が弱い。ひとりひとりの技量は高いのかもしれないが、アンサンブルが雑なことがしばしばある。
しかし、このオーケストラはしっかりしている。とくに、ヴィオラとチェロのセクションが素晴らしい。
ヴァイオリンは5プルト、コントラバスは8丁あるなかで、チェロは3プルト。低音はさほど重視していないのかと思いきや、とても強い音を発するので驚いた。そして、合奏が緻密。このふたつのセクションが、全体の彩りと重心を決めていたようだ。
4楽章になると合唱が登場する。この合唱団は鍛え抜かれていると見えた。タテの線がくっきりとしていて、音にブレがない。室内楽的な合唱、と言えるかもしれない。音は硬めで、あたかも磨き抜かれた宝石のよう。この冷やっとした肌触りが、暖かいオーケストラと相俟って、素敵なハーモニーを繰り出している。
指揮者の北原は、昔は東京のプロのオーケストラで鳴らした人。髪がすっかり白くなって貫禄たっぷり。でも、どことなく浮世離れした雰囲気は健在で、和やかなムードを発散する。必ずしもわかりやすい指揮ではなかったかと思うが、かなりのレッスンを施したのだろう、おおらかで、かつ求心的な音世界を見事に描ききっていた。
合唱指揮 栗山文昭
泉貴子(ソプラノ)
鳥木弥生(アルト)
樋口達哉(テノール)
豊島雄一(バリトン)
2014年12月8日、東京オペラ・シティにて。
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