梯剛之さんのリサイタルに足を運びました(2021年9月25日、東京文化会館小ホールにて)。
シューベルト 即興曲集 D.935
シューベルト ソナタ 21番
梯さんの演奏を聴いたのは初めてでしたが、ずっと長く印象に残るであろうリサイタルでした。
彼のピアノの特長は、大声を出さず、控えめでありながら、じっくりとした語り口が不思議な色彩感をもって響く独白のよう。それはあたかも、見知らぬシューベルトその人を想起させました。
それを特に強く感じさせたのは、即興曲の1,3番、それとソナタの1楽章。テンポの変化はあまりなく、落ち着いた左手の正確なリズムを基調にして淡々と弾きつつ、ときにキラリとした高音を放つ。それは装飾音であったりアルペジオであったりで、ほんの少しだけ顔を出すところの儚さがよかった。
全体を通して、音色は柔らかめであり、技巧は高い。
いいピアニストだと思います。
彼がもっとも好きな作曲家は、シューベルトとショパンだという。ショパンの演奏もぜひ聴いてみたい。
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