新国立劇場の制作によるマスネ「ウェルテル」公演に足を運びました(2019年3月24日、新国立劇場にて)。
結論から言えば、シャルロッテ役の藤村美穂子さんの独壇場でした。声の深みとフランス語発音の味わいの濃さもさることながら、音量のコントロールが素晴らしい。奥行きのあるメゾの音色は大ホールを満たし、オーケストラに比しても遜色のない広がりを感じさせました。
代名役のピルグは硬質な声の伸びが見事。3幕の、プッチーニを思わせるアリアは、若々しくて力強い歌がストレートに響き渡って気持ちが良かった。いささか一本調子の感はあったが、ウェルテルのキャラクターがそうなのであるから、これで良し、か。
ソフィー役の幸田さんは相変わらず可憐な歌を聴かせてくれました。ただ、ヴィブラートが思いのほか強いなど、藤村さんと絡むところではアラが見えてしまう。それは些細なことなのですけどね。
コクのある音を紡ぎ出した東フィルは良かったし、歌手とのタイミング/音量といったコントロールをしっかり決めた指揮者はなかなかの手練れ。
演出はシンプルで古典的とも言えるもの。好感を持ちました。
でもこの公演は、やっぱり藤村さんに尽きるかな。彼女の歌、ずっと聴いていたいと思いました。
【ウェルテル】サイミール・ピルグ
【シャルロット】藤村実穂子
【アルベール】黒田 博
【ソフィー】幸田浩子
【大法官】伊藤貴之
【シュミット】糸賀修平
【ジョアン】駒田敏章
【指揮】ポール・ダニエル
【合唱指揮】三澤洋史
【合唱】新国立劇場合唱団
【児童合唱】多摩ファミリーシンガーズ
【管弦楽】東京交響楽団
【演出】ニコラ・ジョエル
【美術】エマニュエル・ファーヴル
【衣裳】カティア・デュフロ
【照明】ヴィニチオ・ケリ
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