新国立劇場の制作、タンゴー指揮東京フィル・他の演奏による、ビゼーの「カルメン」公演に足を運びました(2018年11月23日、新国立劇場にて)。
この公演の最大の見どころ・聴きどころは、コスタ=ジャクソンによるタイトル・ロールでした。
匂い立つように深く豊潤なフランス語、腰が低くどっしりと安定した音程、銀幕のソフィア・ローレンを思わせる野趣たっぷりの演技、そして危険なまでに甘い色香を纏わせた艶やかな声。カスタネットを叩きながらの踊りも堂に入っていた。
現代において最高峰のカルメンなのではと感じさせるくらい、見事な出来栄えでした。
ミカエラもよかった。砂川さんを生で聴くのは初めてでしたが、痒いところに手が届く歌いぶりで不満なし。まっすぐで清澄な声は、ときには可憐、ときには強い意志を携えながら大ホールに響きわたりました。
ドン・ホセは、声そのものは輝かしかったけれど、大味だったような。
エスカミーリョは8等身の風貌がじつに立派で絵になっていましたが、歌はまずまず。
オーケストラは2幕くらいからエンジンがかかってきた。なかでも、前奏曲でのクラリネットとファゴット、闘牛士の歌でのホルンのソロに唸りました。
ただ、ときおり歌とズレていたり、音量が不足していたところが散見された。そのあたりは初日だったせいか?
合唱は児童を含めてよかった。力強く、透明感があり堪能しました。
演出は極めてオーソドックス。舞台が綺麗だったし、音楽を聴くのに妨げになるような要素は見当たらなかった。
冒頭に書いたように、この公演における大きな収穫はコスタ=ジャクソン。彼女が歌う舞台をまた観たいと思わずにいられません。じつに素晴らしかった!
【カルメン】ジンジャー・コスタ=ジャクソン
【ドン・ホセ】オレグ・ドルゴフ
【エスカミーリョ】ティモシー・レナー
【ミカエラ】砂川涼子
【スニガ】伊藤貴之
【モラレス】吉川健一
【ダンカイロ】成田 眞
【レメンダ―ド】今尾 滋
【フラスキータ】日比野 幸
【メルセデス】中島郁子
【合唱指揮】三澤洋史
【合唱】新国立劇場合唱団、TOKYO FM少年合唱団
【ダンサー】新国立劇場バレエ団
【演出】鵜山 仁
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