ユーリ・テミルカーノフ指揮読売日本交響楽団の演奏で、マーラーの交響曲3番を聴く。
テミルカーノフの演奏をディスクで聴いたことはあると思うのだが、ほとんど印象に残っていない。「ロシアの指揮者」というように勝手に括って、よく吟味しなかったからだろう。でも、聴いている事は覚えている。
この演奏会で、やっとこの指揮者の概要がわかったような気はする。
彼は、メリハリがはっきりした演奏をする。速くて激しい部分では、打楽器を徹底して強打する。金管楽器も思い切り咆哮しているようだ。
その一方で、穏やかな場面では、テンポを細かく揺らしながらじっくりと歌う。それがなかなか自然なので、速度の変化が馴染む。
なので、この指揮者はわかりやすい演奏を心がけて指揮をしているのではないだろうか。わかりやすいことが悪いはずがない。だから、1988年から長きに渡ってサンクトペテルブルク・フィルの音楽監督を務められているのではないだろうか。
全曲で、おおざっぱな計測であるが、約100分かけている。1楽章がいくぶん遅いように感じた。テンポは場面によってわりと頻繁に変更され、抑揚を生み出していた。
全曲を通して聴きどころは多かった。まずは1楽章のトロンボーン。長いソロを楽々と吹いていた。微妙なヴィブラートをかけているところなど、昔のフランスの金管奏者のようだ。首席トロンボーンの桒田晃、この人は名人と言ってもいいのじゃないか。
小山由美は、出だしが震えていて音程が合っていないのでもしかしたら事件かと思ったが、すぐに持ち直した。緊張のためだろうか。その後は華やか、かつふくよかな声で夏の夢を歌いあげた。
5楽章の女声合唱は凛としていて素晴らしい。これほどのコーラスが聴けるとは思わなかった。
児童合唱は、女の子が多かったようだ。
編成は、4管編成。ヴァイオリンは6プルト、コントラバスは8台。終楽章のヴァイオリンに、もう少し潤いが欲しいとは欲張りかな。
この曲を生で聴くのは、1986年に小澤征爾指揮ボストン交響楽団で聴いて以来。こちらのほうがよかったと思えるのは、加齢による疲れのせい? いい演奏会だった。
2015年6月7日、東京、文京シビックホールにて。
「思い出のマーニー」海外版。
在庫がなく、ご迷惑をおかけします。
そろそろ重版できる予定です。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR