演目は、ブルックナーの交響曲8番。
スクロヴァチェフスキのブルックナーだから期待しないわけにいかなかった。
第1ヴァイオリンが6プルト、ヴィオラ5プルト、コントラバス8台、ハープ3台の4管編成。
彼は92歳であるにも関わらず全曲を通して、椅子を使わず立って指揮をした。譜面台にはスコアがポツンと置かれており、それは開かれることはなかった。
棒の振りは淀みなく、小さいけれども的確に指示を出しているように見えた。
弦楽器を主体に鍛えているように聴こえた。弾き始めが実にデリケートであり、艶やかで弾力のある響きを終始聴かせた。
1楽章の聴きどころは、ホルンのソロからオーボエのソロに引き継がれる、比較的静かなところ。心もちヴィブラートの効いたホルンの甘い響きと、決然としたオーボエが、なんとも言えぬ存在感を示していた。
2楽章は、チェロのピチカートを背に、朗々と鳴るヴァイオリン。しなやかで、高貴な音。読売日響の弦って、こんなにいいものだったか。
3楽章は全部が聴きどころだったが、強いて言えばチェロ。4管編成なのに8台だから決して大きいとは言えないのに、雄大でまろやか、かつキリリと締まった合奏を聴かせてくれた。頂点は、シンバルとトライアングルあり。ハープはしっかりと鳴った。
3楽章まではわりとゆっくりとしたテンポをとっていたが、4楽章は快速。シューリヒトがウイーン・フィルを振った有名なセッション録音のテンポに近いかもしれない。とても雄渾。だが、第3主題をレガートで奏するあたりの味付けは、一風変わっていて面白い。
ラストは怒涛の速さ。いままで聴いた中で、トップクラス。有無を言わさぬ刀使い。
好みでは、ここは、最後の3音をじっくりと鳴らせて欲しかった。
タイムは、3楽章までがゆっくりとしていたので、腕時計でおおよそ84分。
この曲をじつに久しぶりに生で聴いたが、やはり長い。楽しいけれど長い、長いけれどももっと続いてほしい。そんな曲だし、演奏だった。
2016年1月21日、東京芸術劇場にて。
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