クリスティ指揮レザール・フロリサン、他の演奏によるヘンデル「メサイア」公演に足を運びました(2019年10月14日、東京オペラシティ、タケミツ・メモリアルにて)。
「メサイア」は昔から好きで、CDをいくつか集めました。このところの断捨離で減ったけれど、まだしつこく何組か持っています。
でも、実演を聴くのはこれが初めて。いままで機会がなかったわけじゃないのに足を運ばなかったのは、いくつか理由があり、いずれも些細なこと。今回の縁に感謝。
古楽器の、弦楽のざらざらとした響きを特段好きなわけではないから、序曲は文字通り序の口で、それ以降が本番だと思っていました。それは的中。歌が入ると、俄然いい。とりわけ合唱が。
クリスティは全体的に速めのテンポを設定、それに乗る合唱はなんと生き生きとしていたことか!
総勢30名に至らないくらいの規模、艶やかでなめらか、それでいてキメ細かな情感に溢れた歌。抑えめでありつつも喜びに満ち満ちたキリストの生誕、大理石のように毅然としたハレルヤ、そして厳かななかにチャーミングな芳香を纏わせた終曲。合唱は最後まで音楽の軸を担っていたし、存在感は大きかった。オーケストラ以上と言えるかも。古楽のアプローチとはいえ違和感が全くないところ、声には時代を超越した普遍性のようなものがあるように感じました。
といいつつオケも悪くない、どころかレベルが高い。ひとつ挙げれば、トランペット。バルブがない楽器だろうから、その難易度は高いと想像するけれども、聴かせどころの「ラッパは鳴りて」は鮮やかだった。ミスどころか終始柔らかく渋みのある音色を響かせてくれて、感服。
ソロではミードのアルト(カウンター・テナー)を気に入りました。練り絹のような声質は輝かしくもあり、音程も安定。こんな歌を聴かせてくれるのだったら、曲によっては女声のアルトよりこちらを取りたい、そう思わされました。
クリスティのリードは、先に述べたように速めのテンポを設定した小気味よいものでした。ときにグッとテンポを落として力を溜めるところがあり、そこはいささかロマンティックであったものの、それはこちらも好むものであったし、効果的であったし、腑に落ちたのでした。
エマニュエル・デ・ネグリ/キャスリーン・ワトソン(ソプラノ)
ティム・ミード(アルト)
ジェームズ・ウェイ(テノール)
パドライク・ローワン(バス)
レザール・フロリサン(管弦楽・合唱)
PR