クリスティアン・ツィメルマン(2006.5.20/6.2 サントリーホール) 日本ハムがソフトバンクに勝って、日本シリーズ進出。
劇的な幕切れであったが、札幌ドームでも試合ということもあって、終始流れは日ハムにあったようだ。シーズン前に、誰が日ハムの優勝を予想したことだろう。
さて、ピアノ・リサイタルから。
NHKの放送から、2週間近く遅れての記事。
ビデオに録画して、やっと観た。もったいないから観なかったわけでは
ない。映像付きだと、なにか構えてしまうのである。
ツィメルマンは好きなピアニストであるので、これは楽しみであった。
モーツァルトの10番(K.330)とベートーヴェンの8番(悲愴)は、テンポの変化が多くて情感をたっぷり出した演奏。ひとつひとつの音は粒だっているし、強奏でも音は濁ることなく澄んだ響きを聴かせてくれるが、歌いまわしはとてもねっとりとしたピアノである。
古典派の演奏としては少し違和感があるかもしれないが、生で聴いたら、きっと感銘を受けただろうと思う。堂々と引き崩してはいるが、流れを損なうことのないセンスを感じる。ただ、全面的に賛同できる解釈ではなく、いささか挑戦的な解釈にも思える。
ラヴェルの「高貴で感傷的なワルツ」でも、崩した演奏であるが、モーツァルトに比べると違和感はなく、むしろ退廃的な感触を色濃く出しえている演奏だと思った。フランスの香り漂う、というよりも、音色と細かなテンポの変化の綾で聞かせる演奏。
最後のガーシュインの前奏曲は、ラヴェルのあとなだけに、雰囲気がハマっていた。沸き立つようなリズムと、暗い酒場にいる雰囲気の表出になんだかゾクゾクする。
実際の演奏会では、この曲順だったのか定かではない。
それにしても、このピアニストの技巧はすごい。このリサイタルを聴いた限りだと、ほとんどミスはなかった、どんなにうまいピアニストでも、これだけの曲をライヴでやったら、はっきりと音をはずす部分が聴こえるものだが、ツィメルマンは概ねノーミスで弾き切ったように思う。
それは、安定したテクニックに加えて、自身の感性と、肉体とに矛盾がないということが大きな要因ではないだろうか。★音楽blogランキング!★にほんブログ村 クラシックブログ無料メルマガ『究極の娯楽 -古典音楽の毒と薬-』 読者登録フォーム
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